行ってみたいデザイン空間
愛知県西三河地方の三州瓦を用いた2階の商業空間。隈研吾氏のデザインらしい日本の伝統美を感じる。
建築家・隈研吾氏がKITTEの内装環境をデザイン
和のこだわりが人へのやさしさを演出してくれる
KITTEの内装環境をデザインしたのは、建築家の隈研吾氏である。日本の伝統美に造詣が深く、現代的なアレンジを施しながら採り入れることに長けた隈氏は、ここKITTEでも遺憾なくその手腕を発揮している。特に吹抜けに面する回廊部分など共用部分では、フロアごとに異なる壁の仕上げが施された。
地下1階は和紙を大胆にあしらった空間、1階は北海道旭川のサクラ材が使われた空間、2階は愛知県西三河地方の三州瓦を用いた空間、3階は織物を用いた空間、4階は金属塗装を用いた空間、5階は細い線状に加工されたクリ材を用いた繊細な木の空間、6階は福岡県久留米市のナラ材を用いた柔らかい木の空間。ムクの厚板が使われながら動きのある意匠が施された6階の壁面などは、隈氏の真骨頂といえる。
日本各地でつくられた素材を仕上げ材として使うことで、全国各地を「つなぐ」ことが意図されたという。そして、これらの素材は古来より日本で使われている素材。過去の歴史と未来がつながり合うという意図は、歩きまわるうちにしっとりと伝わってくることだろう。
過去と未来をつなぐという点では、4階にある旧東京中央郵便局長室を復元した部屋も見逃せない。東京駅丸の内駅舎を望む旧局長室は、当時の仕上げや意匠を極力残して復元しており、竣工当時にタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができる。
そして、ショッピングや食後の休憩には、6階の大きな屋上庭園「KITTEガーデン」へ。ここでも、東京駅を新鮮な角度から見ることができる。新幹線を含む、東京駅の線路を俯瞰することができるので、鉄道ファンや子供たちにも人気のスポットになるだろう。
誰もが一度は訪れたことがあるに違いない、東京駅とその周辺。KITTEは、地理や歴史的な要素、さらには思い出や人と人との出会いをつなぎ、未来を垣間見せるものとなっている。その媒介として、新旧の融合を試みた建物とその空間が大きな役割を果たしていることは、間違いない。
(文/加藤 純)
地下1階は和紙を大胆にあしらった空間。食のフロア「キッテ グランシェ」が展開され、東京駅丸の内地下広場からダイレクトにアクセスできる。
1階部分は北海道旭川のサクラ材を使用した肌触りを感じる空間。
6階は福岡県久留米市のナラ材を用いた柔らかい木の空間。ムクの厚板が使われながら動きのある意匠が施され、隈氏の真骨頂といえる。*
3階店舗の一つ、デザイン雑貨の「Floyd(フロイド)」。静岡から東京初の直営ショップだ。こうした東京初出店が目立つのもKITTEの特徴(内装設計:スキーマ建築設計)。*