行ってみたいデザイン空間
旧万世橋駅時代のプラットホームを整備したカフェ&和酒「N3331」。すぐ横を電車が通過するので、鉄道ファンにはたまらない。
展望デッキ。JR中央線の上下線が通る線路に挟まれているため、車両と同じ目線で体験ができる。
コンセプトは「万世橋駅サロン」
文化が集積する場から新たな発信が期待される
新しい要素として付け加えられたなかで目立つのは、2階の展望カフェとデッキだ。重厚なレンガの高架橋と対比的に、ガラスで囲われた明るい空間となっている。
旧万世橋駅時代のプラットホームを整備した、展望デッキ「2013プラットホーム」とカフェ&和酒「N3331」。それぞれJR中央線の上下線が通る線路に挟まれているので、電車車両が同じ目線ですぐそばを行き交うという珍しい体験ができる。
上下階をつなぐのは、新設されたエレベーターのほかに、つくられた西暦年で呼ばれる「1912階段」と「1935階段」。厚い花崗岩や稲田石を削り出した段板、往年のタイル壁に覆われた空間は、過去と未来をつなぐタイムトンネルのようだ。
これまで「エキュート」といえば、エキナカ(駅中)での展開であった。同社にとって、初のエキソト(駅外)となるこの施設。
リノベーションのコンセプトとして「万世橋駅サロン」を掲げており、往年のサロンのような文化・情報・知・技術が集積する場にするという。
「文化と情報がクロスして発展した交通の要衝にふさわしく、歴史的な重なりという縦の軸と、地域への展開という横の広がりの双方を担う施設を目指す」と前出の三井社長は語る。
知的好奇心を刺激するような常設ショップのほか、期間限定ショップを設けて変化を楽しめる仕掛けを設けているのも、その一環。第一弾として、東東京エリアで100年近くモノづくりに取り組んできた老舗メーカーなどが出店している。
歴史を受け継いだこの施設が、どのように文化を発展させて神田万世橋界隈から日本に、そして世界に広げていくことができるのか。文化発信型の商業施設としても、大きな期待がかかる。
(文・写真/加藤 純)
上下階をつなぐのは、建造された西暦年で呼ばれる「1912階段」や「1935階段」。
往年のままの空間は、過去と未来をつなぐタイムトンネルのようだ。
1階は高架橋のアーチを活かして、連続する回廊のような空間になっている。
写真はカフェと雑貨などを扱う「フクモリ」。
1912年完成の万世橋駅は、レンガ積みの擁壁をもつ土盛高架橋。アーチの真ん中にある丸い石の装飾は「メダリオン」と呼ばれ、ドイツ人技師が技術指導をしたことから、ドイツにも同じような高架橋がある。
新設されたエレベーター(左)。施設のコンセプトは「万世橋駅サロン」。
往時に栄えたサロンのような雰囲気も漂う(右)。建物の設計は、斬新なデザインで注目を
浴びている「みかんぐみ」。
マーチエキュート(mAAch ecute)神田万世橋
住所:東京都千代田区神田須田町1-25-4
電話:03-3257-8910
営業時間:<物販>11:00-21:00(日祝20:00)
<飲食・カフェ>11:00-23:00(日祝21:00)
※一部ショップにより異なる