デザインインフォメーション

2013.09.24

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウェグナーの重要なデザインソースとなった中国・明代の椅子「圏椅(クァン・イ)」

*武蔵野美術大学美術館・図書館所蔵

 

 

 

ハンス・ウェグナーの椅子を身近に体感し

その思想に触れることができる絶好の機会

 

そしてこの展覧会は、ウェグナーの足跡を丹念に紹介することから彼の思想に触れ、未来のデザインについての視座も示すものとして注目される。

 

前述のとおり、ウェグナーは時代ごとの技術や社会的なニーズ、また行動様式の変化に柔軟に対応しながらデザイン活動を続けていった。

 

たとえば、ウェグナーは「安全で美しく、よい商品を、安価で提供できることこそが最善であり、そのために機械を導入することをためらうべきではない」と語ったとされる。

 

「Yチェア」などはその代表例だ。とても柔らかく繊細なフォルムが印象的であるが、ほとんどの工程で機械加工されている椅子である。

 

同時にウェグナーの中には、常に使用者の立場に立った物づくりをし、よいものを長く使い続けるという北欧の精神が根づいていることが紹介される。

 

ウェグナーは、デザイナーでありながら家具職人の素養があった。一貫して木を使い続け、美しく丈夫な椅子をデザインしたウェグナー。

 

彼の生み出す作品の一つ一つは暮らしの原点を感じさせるものであり、それは時代を超えて愛される大きな理由であるだろう。私たちは未来の暮らしを描くとき、ウェグナーの柔軟さと頑固さをいつでも参照したい。

 

ぜひ、この機会にそれぞれの椅子をじっくりと見て、腰掛けて座り心地を味わいたい。全身の感覚を研ぎ澄ませて椅子に触れること、それがウェグナーを理解する一番の方法である。

                               (文・加藤 純)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イージーチェア」 1953年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デルフィンストーレン「ドルフィンチェア」(プロトタイプ) 1950年

 

 

 

 

 

ハンス・ウェグナー(1914~2007年)

1914年、南ユトランド半島トゥナーに生まれる。14歳で家具職人の修業を始め、17歳で指物師のマイスターを取得。1936年、美術工芸学校でデザインを学び、卒業後はアルネ・ヤコブセンの事務所に勤務。独立後は、コペンハーゲン美術工芸学校で教鞭を執りながら、デンマーク協同組合連合会家具部門のために家具デザインを行う。1984年、デンマーク女王よりナイトの称号を得る。1995年、生まれ故郷トゥナーにウェグナー美術館が開館。生涯で500個以上の椅子をデザインしたといわれる。2007年、92歳で逝去。2014年に生誕100年を迎える。

 

 

 

 

 

島崎信+織田憲嗣が選ぶ ハンス・ウェグナーの椅子展

場所:スパイラルガーデン(スパイラル1F)

会期:9月27日(金)~10月14日 (月・祝)

時間:11:00~20:00 会期中無休

住所:東京都港区南青山5-6-23

電話:03-3498-1171(スパイラル)

http://www.spiral.co.jp/

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