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2017.03.13

過去最大規模の展覧会
『草間彌生 わが永遠の魂』が開催中

現代日本を代表する前衛芸術家、草間彌生。初期作品から最新作まで、絵画、オブジェ、インスタレーション、映像作品など約270点を展示。草間彌生の活動を網羅した過去最大級の展覧会『草間彌生 わが永遠の魂』に世界中から注目が集まっている。

 

展覧会の中心的存在の「わが永遠の魂」シリーズ。

展覧会の中心的存在の「わが永遠の魂」シリーズ。

 

「真夜中に咲く花」(2016)など、大きなオブジェがメイン会場を飾る。

「真夜中に咲く花」(2016)など、大きなオブジェがメイン会場を飾る。

 

展示室の壁面を埋め尽くす日本初公開の132点

最新シリーズ「わが永遠の魂」が放つ圧倒的迫力

 

2月22日から東京・六本木の国立新美術館で開催されている『わが永遠の魂』は、前衛芸術家 草間彌生の集大成とも言える展覧会だ。1950年代から現在まで各年代の作品を体系的に展示している。

 

なかでも中心的存在となっているのが「わが永遠の魂」シリーズだ。

 

「わが永遠の魂」は、草間が2009年から取り組んでいる大型絵画の連作で、現在までに500点余りが制作されている。今回の展覧会では、厳選した132点を、広々とした展示室の壁面を埋め尽くすように展示した。

 

来場者は、最初の展示室で「わが永遠の魂」に迎えられることになる。会場に足を踏み入れた瞬間、「わっ……!」と思わず声が漏れるほどの圧倒的な草間ワールドが広がっている。

 

大きな壁面を埋めつくした、「命の限り」(2015)などの最新作。

大きな壁面を埋めつくした、「命の限り」(2015)などの最新作。

 

「人生を歩もう」(2016)など、カラフルな作品が並ぶ壁面。

「人生を歩もう」(2016)など、カラフルな作品が並ぶ壁面。

 

カンヴァスに描かれた作品はどれも2m近い大きさ。

カンヴァスに描かれた作品はどれも2m近い大きさ。

 

 

展示室の中央に配された花をモチーフにした巨大な立体作品群を囲むように、「わが永遠の魂」シリーズが壁面にずらりと並ぶ。カラフルでポップな21世紀の作品は、ひとつひとつが強い個性を放っていながら空間としての一体感もある。

 

「わが永遠の魂」シリーズは、多様なモチーフを多彩なスタイルで表現している。色数の少ない作品もあれば、カラフルな作品もある。具象も抽象も混在している。

 

現在も制作が続く同シリーズは、初期から新作まで少しずつスタイルを変容させているが、どの作品もあふれる生命のエネルギーに満ちている。

 

これほどまでに観る者の背中を押してくれるような力強い作品が、約8年のあいだに500点以上も生み出されていることに驚かずにはいられない。

 

(左)「とらわれのダニー・ラ・ルー」(1970・広島市現代美術館)。(中)「最後の晩餐」(1981・千葉市美術館)、(右)「太陽の雄しべ」(1989・富山県美術館)。

(左)「とらわれのダニー・ラ・ルー」(1970・広島市現代美術館)。(中)「最後の晩餐」(1981・千葉市美術館)、(右)「太陽の雄しべ」(1989・富山県美術館)。

 

(左)「地上の銀」(1990・リト&キム・カマチョ蔵)、(右)「ドレッシング・テーブル」(1990・東京都現代美術館寄託)。

(左)「地上の銀」(1990・リト&キム・カマチョ蔵)、(右)「ドレッシング・テーブル」(1990・東京都現代美術館寄託)。

 

「黄樹リビングルーム」(2017)。

「黄樹リビングルーム」(2017)。

 

創作活動をスタートした女学校時代から現在まで

作品の変遷を追いながら草間彌生の全貌を知る

 

広々と明るい「わが永遠の魂」の展示室から次のコーナーの歩を進めると、暗く凝縮されたような空間に一転する。

 

ここからは、まだ少女だった1930年代の鉛筆画から、女学校時代に描いた油彩や岩彩、約15年にわたるNY時代の映像作品やコラージュ、帰国後の立体作品がほぼ年代を追うように展示されていく。

 

最初期の作品は、草間が「描かざるを得なくなった」生い立ちを物語る。

 

裕福な家庭に生まれながら、母との確執によって精神的に追い詰められ、幻覚や幻聴に悩まされるようになった。水玉も、奇怪に見える動植物も、繰り返される網目も、鑑賞者には非現実の世界であっても草間にとっては実際に見えている現実だ。

 

四方の壁と天井、床がすべて鏡で構築された暗い部屋に無数のカラフルなLEDライトを吊るした<<生命の輝きに満ちて>>は、草間の感じる世界を疑似体験できる作品でもある。鏡に映るライトと鑑賞者は永遠に繰り返されるモチーフであり、無限の広がりを感じさせてくれる空間は宇宙のようだ。

 

 

「水玉強迫」(2017)。

「水玉強迫」(2017)。

 

(左)「The Man」(1963・広島市現代美術館)、(中)「無題(イス)」(1963・豊田市美術館)、(右)「トラヴェリング・ライフ」(1964・京都国立近代美術館)。

(左)「The Man」(1963・広島市現代美術館)、(中)「無題(イス)」(1963・豊田市美術館)、(右)「トラヴェリング・ライフ」(1964・京都国立近代美術館)。

 

(左)少女時代の鉛筆画の作品「無題」(1939)なども展示。(右)1950年代の「残骸」(1950)などの作品群。

(左)少女時代の鉛筆画の作品「無題」(1939)なども展示。(右)1950年代の「残骸」(1950)などの作品群。

 

2016年9月。本展覧会の記者発表の席で、草間は「私の人生は芸術で開かれました。昼も夜も芸術に明け暮れ、若い人たちのためにも死に物狂いで闘ってきた。何か悩みがあるとき、私の生きてきた道を見つけていただければ嬉しい」と語った。

 

87歳になった現在でも時を忘れて創作活動に没頭するのは、描けば描くほど湧いてくるイメージとアイデアを吐き出すことで、「死に物狂いで闘って」いる証だろう。

 

宇宙、生命、愛、魂、永遠、自と他。どの作品にも、普遍的なテーマが重ねられている。

 

会場で貸し出している音声ガイドは必聴だ。詩の朗読や歌唱を含めた草間本人の音声もふんだんに収録されているのだが、これだけの作品を残しながら、音声ガイドのなかで「まだ、努力が足りないと思っている」と語っているのだから恐れ入る。

 

いま、世界でもっとも高く評価されている日本人の現代アーティスト、草間彌生。彼女の作品に触れ、魂に触れ、共鳴できるめったにない機会を逃さず、会場に足を運んでほしい。

 

(取材・文/久保加緒里、写真/川野結李歌)

 

タイルに描かれた「南瓜」(2016)の作品3点。

タイルに描かれた「南瓜」(2016)の作品3点。

 

(左)「かぼちゃ」(1999・松本市美術館)、(右)「黄樹」(1992・フォーエバー現代美術館)。

(左)「かぼちゃ」(1999・松本市美術館)、(右)「黄樹」(1992・フォーエバー現代美術館)。

 

体験型展示では鑑賞者自らが作品の一部になるような感覚を体験できる。(左)「生命の輝きに満ちて」(2017)。鏡の間で無数にきらめく小さな光を体験。(右)「オブリタレーションルーム」。真っ白い部屋に水玉のシールを手にして入るとカラフルな色彩で埋まる。

体験型展示では鑑賞者自らが作品の一部になるような感覚を体験できる。(左)「生命の輝きに満ちて」(2017)。鏡の間で無数にきらめく小さな光を体験。(右)「オブリタレーションルーム」。真っ白い部屋に水玉のシールを手にして入るとカラフルな色彩で埋まる。

 

国立新美術館の敷地内でのインスタレーション「木に登った水玉」(2017)。

国立新美術館の敷地内でのインスタレーション「木に登った水玉」(2017)。

 

初期から最新作まで約270点を展示した最大級の個展。(右)カラフルでポップなグッズも揃うミュージアムショップ。

初期から最新作まで約270点を展示した最大級の個展。(右)カラフルでポップなグッズも揃うミュージアムショップ。

 

 

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草間彌生(くさまやよい)

前衛芸術家、小説家。1929年長野県松本市生まれ。幼少より水玉と網目を用いた幻想的な絵画を制作。1957年単身渡米、前衛芸術家としての地位を築く。1973年活動拠点を東京に移す。1993年ヴェネツィア・ビエンナーレで日本代表として日本館初の個展。2001年朝日賞。2009年文化功労者、「わが永遠の魂」シリーズ制作開始。2014年世界で最も人気のあるアーティスト(『アート・ニュースペーパー』紙)。2016年世界で最も影響力がある100人(『タイム』誌)。2016年文化勲章受章。

  

国立新美術館開館10周年 草間彌生 わが永遠の魂

会期:2017年2月22日(水)~5月22日(月)

会場:国立新美術館 

休館日:火曜日 ただし5月2日(火)は開館

時間:10:00~18:00(金曜日は20:00まで) ※入場は閉館の30分前まで

      4月29日(土)~5月7日(日)は毎日20:00まで開館

料金:一般1600円、大学生1200円、高校生800円、中学生以下無料

住所:東京都港区六本木7-22-2

電話:03-5777-8600 (ハローダイヤル)

http://kusama2017.jp/

 

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