デザインインフォメーション
世界の花舞台にバラをテーマに挑戦
「フラワーアートアワード2016」受賞者決定
春を彩るフラワーアート展が東京ミッドタウンで開催された。花材をバラに限定した「フラワーアートアワード2016」と、プリザーブドフラワーやアーティフィシャルフラワーなど“生花以外の花”を使った「フラワーアートショウケースアワード2016」。コンペティション受賞作を中心に、華やいだ会場の様子をレポート。グランプリ受賞者は、日本代表としてフランスのアート・フローラル国際コンクールへ出場する。
香り高い大輪のティーローズ「イヴ・ピアジェ」を
ふんだんに使ったフラワーアートが最優秀作品賞に
4月20日から4月24日の5日間、華麗なフラワーアートが東京ミッドタウン ガレリアのパブリックスペース各所に展示された。
コンペティションとして開催されたのは「フラワーアートアワード2016」と「フラワーアートショウケースアワード2016」、フラワーアートアワード2016の特別部門である「ローズアレンジメントコンテスト2016」の3部門。「花器 作家エキシビション」と「ザ・フラワーデザイナーズエキシビション」も同時開催された。
今年で17回目を迎える「フラワーアートアワード」は、バラを題材にした国内屈指のフラワーアートのコンクールだ。最優秀作品賞受賞者は、日本代表としてフランスで開催される大会「アート・フローラル国際コンクール」への出場権を獲得できるとあって、毎年、力作が揃う。
今年は「IMAGINE(イマジン)」をテーマに10のチームおよび個人が出展。床面165cm四方以内、高さ290cm以内というかなり大きな規定サイズのなかに、100本以上のバラの花とグリーンや枝、静物などを組み合わせ、オリジナリティ溢れる世界観を創出していた。
「平和と愛」を表現に織り込んだ作品が多かったのは、ジョン・レノンの名曲を想起したからだろうか。最優秀作品賞・グランプリ/エールフランス賞・フランス大使館賞を受賞した『La Fontaine d’amour Love Fountain』(大泉麗仁さん、やまぐちとくえさん、モランジュ麗逢さん)も、「愛」を主題とした作品だった。
この作品のために用意した大きな壺のような花器に、200本を超えるイヴ・ピアジェを活け込んだ。粘土や漆喰を塗り重ね、一部にピンクの塗装を施した花器とイヴ・ピアジェが一体となって、遠目には大きなバラの蕾のようにも見える。
作品に近づくにつれ、ピアジェの芳香が漂い、バラ一輪一輪のくっきりとした輪郭が見えてくる。ピンクの濃淡は活き活きとしていて力強く、壺から湧き上がって溢れているかのようだ。
グランプリ受賞作の作者である大泉さん、やまぐちさん、モランジュさんは、いけばな草月流の同門の士。フラワーアートアワードには一昨年、昨年もコンセプトワークで応募しており、2014年は佳作・港区賞、2015年は優秀作品賞・準グランプリ/グラン マルニエ賞を受賞、3度目にしてグランプリの栄光を掴んだ。
「応募にあたってチームで最初に決めたのは、“愛”と“平和”を表現しようということでした。3人でアイデアを出し合い、イヴ・ピアジェだけで作品を構成。森の奥深くにある泉から滾々と愛が湧き上がるイメージをつくりあげていきました。すばらしい作家のみなさんが真剣に勝負をなさっているなかでグランプリを受賞できたことは、ほんとうに嬉しいです」(大泉さん)
「去年、おととしと参加してフラワーアートの難しさを実感し、今年は初心に帰ってコンセプトワークに取り組みました。いけばなとはちがう表現に悩んだこともありましたが、バラに囲まれた制作の時間はやはりすばらしいひとときでした。フランスの大会は洞窟が舞台。神秘的な空間にどのような作品をつくりあげるか、しっかりコンセプトを練って挑みたいと思います」(やまぐちさん)
「フラワーアートアワード2016」の審査員でもある「GALLERY 21」のアソシエイトキュレーター、太田菜穂子さんが、最優秀作品賞の受賞チームにエールを送る。
「フラワーアートには、作者の日常や“どう花と暮らしているか”がすべて現れます。本展覧会のいずれの出品作からも花と生きていることが強く感じられましたが、なかでも『La Fontaine d’amour Love Fountain』は花という生々しさを超え永遠となった“瞬間の美”が表現されていたと思います。商業施設という、ともすれば情報過多な空間で“わたしだけを見て”という集中力が感じられる秀作でした。日本の美が世界に共有されるべき時代。いけばなの素地を活かしてフランスで存分に戦ってほしい」
準グランプリには、『サモトラケのニケ』を彷彿させる羽根が印象的な『Flapping』(吉本雄一さん)と、2本の樹木がアーチ状につながったような『つなぐ[生命]』(のりえさん)が選ばれた。
バラへのオマージュを込めたアレンジメントと
「印象派」をテーマにしたフラワーディスプレイ
「フラワーアートアワード2016」との同時開催で東京ミッドタウンを彩ったのが、バラをメインにしたアレンジメントの競演「ローズアレンジメントコンテスト2016」と生花以外で表現した「フラワーアートショーケースアワード2016」。
ガレリア3階の一角には、テーブルサイズでアレンジメントされた「ローズアレンジメントコンテスト2016」の作品が並んだ。今年のテーマは「ナチュラル&ハーモニー」。器以外は自然素材だけを用い、花材の50%以上にバラの生花を使用したアレンジメントでバラの魅力を最大限に引き出す。
躍動感があったり、優美さが強調されていたり、色味もさまざまなテーブルサイズの作品が一か所に集められていたこともあって、立ち止まって観賞している人も多かった。
ガレリア各フロアの柱ショーケースを飾ったのは、「フラワーアートショーケースアワード2016」の作品。昨年の同時多発テロなどで大きなダメージを受けているフランスを応援する意味も込め、テーマには「印象派へのオマージュ」が採用された。
オープンな空間ではなく奥まった小さなスペースに無限に広がる世界観を展開した作品は、どれも見応え十分。印象派らしいやわらなか光や空気感を感じさせてくれた。
「ローズアレンジメントコンテスト2016」は『For you』(渡辺ひろみさん)が、「フラワーアートショーケースアワード2016」は『光の輪舞曲(ロンド)』(阿久津理子さん)が、最優秀作品賞を受賞している。
「デザイン&アートの街」を標榜する東京ミッドタウンでのフラワーアートアワードの開催は今年で7年目。ガレリアの春をよりいっそう華やかに演出する年に一度のイベントとして、多くのゲストの目を楽しませてくれた。
(文・久保加緒里、写真・川野結李歌)
フラワーアートアワード実行委員会(PLAINS INC)