行ってみたいデザイン空間
これまでの64年間の展示を振り返り
「カマキン」の足跡と厚みを知る
最後の展覧会は1月31日まで開催
神奈川県立近代美術館では2015年度に「鎌倉からはじまった。1951-2016」と題して、これまでの鎌倉での活動を3期に分けて紹介してきた。最後の展覧会となるPART3では、1951年の美術館誕生から1965年までの草創期の様子が取り上げられている。
神奈川県立近代美術館64年の歩みは、すなわち日本の近代・現代美術の歴史を体現するものだ。
発足当時はニューヨーク近代美術館(MoMA)を参考にしたというが、アメリカともヨーロッパとも異なる背景をもつ日本で、いかにカマキンが美術を多くの人々に触れさせ、意識高く日本のアートシーンを牽引してきたのかが展示からは感じ取れる。
特に今回は、所蔵品から厳選された佐伯祐三氏、萬鉄五郎氏、古賀春江氏、松本竣介氏らの作品が展示されている。それとともに、鎌倉館の変遷が図面や写真、映像資料で紹介。
1階展示スペースでは、本館の設計に携わった北村脩一氏と、新館の設計を担当した室伏次郎氏へのインタビューが流され、坂倉氏の設計の理念やアプローチに対する理解を深めることができる。
これらのインタビューや設計図書などが収録された新刊『空間を生きた。「神奈川県立近代美術館 鎌倉」の建築1951-2016』、また当初の建築の姿を再現したペーパークラフトはメモリアルとして、土産にお勧めだ。
総延床面積1500m2余りの決して大きくないカマキンではあるが、坂倉氏の卓越した設計によって無限大の広がりをもつ空間となった。そして長い時のうちに館の関係者や芸術家、観覧者など多くの人が関わることで、計り知れないほど深みのある存在となっている。
本館の構造について2014年に調査されたところ、まだ使用できると判断されたという。しかし、鶴岡八幡宮に返還された後のあり方についてはまだ定まっていない。一連の彫刻、また美術品と共に、奇跡の美術館建築を堪能する機会を逃さないでいただきたい。
(文・加藤 純、写真・川野結李歌)
神奈川県立近代美術館 鎌倉
住所:神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-53
TEL:0467-22-5000
http://www.moma.pref.kanagawa.jp/
鎌倉からはじまった。1951-2016
PART3:1951-1965「鎌倉近代美術館」誕生
会期:2015年10月17日(土)~2016年1月31日(日)
開館時間:9:30-17:00(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日 ただし1月11日(月・祝)は開館。
観覧料:一般1000円/20歳未満・学生800円/高校生100円
中学生、障害者手帳お持ちの方は無料
*各種割引についてはウェブサイトを参照
加藤 純
1974年生まれ。建築ジャーナリスト/ライター・エディター。
1997年東京理科大学工学部建築学科卒業後、建築知識(現・エクスナレッジ)月刊「建築知識」編集部を経て、2004年よりフリーランス。主に建築・住宅・インテリア分野での企画・編集・執筆を行い、建築の面白さと奥深さを広く伝える。著書に『「住まい」の秘密<一戸建て編>/<マンション編>』(実業之日本社刊)。
川野結李歌
横浜生まれ。大学卒業後(美術史専攻)、2013年よりフリーランスのカメラマンとして活動中。雑誌を中心に、ポートレート、映画、アート、建築など幅広く撮影。