デザインインフォメーション
〝今アメリカで最も重要な写真家〟
『ライアン・マッギンレー BODY LOUD!』
21世紀初頭、まさに彗星のように現れたフォトグラファー、ライアン・マッギンレー。〝今アメリカで最も重要な写真家〟と高く評価され、人物と風景をコントラスト豊かに表現する独自の作風で、多くの美術館に作品が所蔵されている。日本の美術館で初となる個展『ライアン・マッギンレー BODY LOUD!』が、東京オペラシティアートギャラリーで開催されている。
大自然のなかに置かれた純粋さと過激さで
「人間」という特殊性が浮き彫りになる
2003年。ライアン・マッギンレーはニューヨークのホイットニー美術館での個展を成功させた。25歳の若さ、ホイットニー美術館史上最年少の快挙である。
個展の成功はそれまでに徐々にキャリアを築いていった結果ではない。1999年に自費出版した初の写真集『キッズ・アー・オールライト』が雑誌編集者やキュレーターの目に留まり、一躍時の人となった。
マッギンレーが撮影する対象は、主に人間だ。しかもほとんどの場合、被写体は衣服をまとっていない。
かといってエロティシズムを微塵も感じさせないどころか滲んでもいない。どこかカラリとした印象で、ヒトとしてあるがままの姿で自然のなかに身を置いていても、ときに異質な物質のようにさえ見えてくる。
意図しているかどうかはわからないが、マッギンレーは作品を生み出すことでヒトの特異性を露わにしていく。
人間は、大自然のなかで本能のままに生きることは不可能だ。人間は、自然界にあって、生まれたままの姿でいることが奇異に映る唯一の動物なのだ。
活き活きと。伸び伸びと。
自己を表現する被写体たち
官能とは無縁のヌードは、肉体美とも重ならない。個としての意志と強さとオリジナリティがあるだけだ。
氷や氷河のなかに配置された全裸の人間はあきらかに異質だ。開放感ではなく、緊張感と集中力を感じさせる。そこにあるのは生命の持つエネルギーであり、類稀なる自己表現であり、活き活きと漲る「生」そのものである。
モノクロームの肖像シリーズも、広い壁一面にポートレイトをコラージュした<<YEARBOOK>>も、被写体からカメラへの意識が消えた瞬間を切り取っているのではなく、撮る者と撮られる者、双方の意識がガッチリぶつかっている。
本展覧会に展示された作品のなかで、<<You and My Friends>>は、欧米各地のライブ会場で熱狂し、撮られることを意識していない観客を撮影し、被写体の顔をクローズアップするように正方形に切り取ってグリッド状に並べている。
セルフコンシャスな状態と、忘我の状態では、どちらがその人らしいのか。
おそらく、両方ともが「Yes」であり、両方ともが「No」であろう。自己を意識している瞬間も、自我を忘れるほどなにかに没頭する瞬間も、深いところでアイデンティティとつながっている。
本展覧会で展示されているのは、初期から近年までの50点あまり。そのすべては、ライアン・マッギンレー自身が選んでいる。ファインダーを覗くマッギンレーに意識を重ね、被写体の放つ強烈な自己の意識を感じ取っていただきたい。
(取材・文/久保加緒里)
All art work :courtesy of the artist and Team Gallery, New York / Tomio Koyama Gallery, Tokyo
ライアン・マッギンレー BODY LOUD!
会期:2016年4月16日(土)~ 7月10日(日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
開館時間:11:00-19:00(金・土は20:00まで/最終入場は閉館30分前まで)
休館日=月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
入場料=一般1200円/大学・高校生800円/中学生以下無料
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話:03-5770-8600(ハローダイヤル)