デザインインフォメーション
国宝、重要文化財を含む約240件が集結
特別展『禅-心をかたちに-』で名宝を観る
遺された書画や像などから禅の本質を読み解いていく『禅-心をかたちに』。臨済宗の宗祖、臨済禅師1150年、臨済宗中興の祖、白隠禅師250年の遠諱(おんき)を記念した特別展が、上野の東京国立博物館で11月27日まで開催されている。
達磨大師の時代から1500年の時を経て
いまなお鮮烈なメッセージを発し続ける作品たち
「禅」という言葉を知らない日本人はいない。「坐禅」や「禅問答」、「以心伝心」など禅に関連することばや禅から生まれたことばもたくさんある。にもかかわらず、「“禅とはなにか”を説明できるか?」と問われたらどうだろう。ほとんどの日本人は口ごもってしまうにちがいない。
昨今、禅は「ZEN」として欧米からずいぶんともてはやされている。凛としていて、静謐で、ときに強ささえ感じさせる。そんなイメージだろうか。
海外では洗練を極めた日本のカルチャーと捉えられることも多い禅だが、じつはルーツはインドにある。禅は、達磨(だるま)大師がインドから中国に渡り、教え伝えた心の在り方であり、仏教の一派、禅宗の修行へとつながっているのだ。
本展覧会にも達磨大師の絵や像が多数展示されているが、その多くは、目を大きく見開き、口をきつく結んでいる。
われわれがよく見知ったその姿は、「仏教は理論を語り合うものではなく、実践しなければ意味がない。ただ黙して坐禅せよ」という教えを体現しているのである。
臨済・黄檗両宗十五派本山を協力で、禅の名宝が一堂に会した本展覧会。「仏や高僧は柔和で穏やかな顔をしている」というイメージを覆すような、厳しく、緊迫した禅の世界を、アートの側面から鑑賞してみてほしい。
水墨画や襖絵、茶の湯など
禅文化の広がりを知る
禅宗では、人間の内には必ず仏性(ぶっしょう)があり、坐禅や読経など修業を積むことで自らの内にある仏性を自覚できるようになると考えられている。自身の心と向き合う「禅」の概念が色濃く表れた書画や像は、美術としても高く評価されてきた。
なかには「仏は皆の中にいる」をそのままかたちにした珍しい仏像もある。京都・宇治の萬福寺に収蔵されている十八羅漢坐像のひとつ「羅怙羅尊者(らごらそんじゃ)」。開いたおなかのなかに仏の頭部が彫られているのである。
お釈迦さまの十大弟子のひとりである羅怙羅尊者は、修行によって悟りを開き、内なる仏の存在を知らしめるために腹を裂いて見せたと言われている。いかにも禅宗らしい仏像なのだ。
展覧会の後半に展開される禅文化の広がりも興味深い。長谷川等伯(とうはく)や池 大雅(いけのたいが)、狩野探幽など室町から安土桃山、江戸時代にかけて活躍した絵師たちが手がけた禅寺の壁画や襖絵は迫力満点。
近年人気の茶の湯関連では、建窯の「油滴天目(ゆてきてんもく)」(大阪市立東洋陶磁美術館蔵)と吉州窯の「玳玻天目(たいひてんもく)」(京都・相国寺蔵)の国宝の茶碗2点も展示されている。
禅の時代の変遷と多彩な文化のすべてを網羅した特別展『禅-心をかたちに-』。達磨大師が説いた教えから「禅宗」となり、戦国武将との関わりのなかから独自の発展を遂げた禅文化が花開くまで、目に見える「モノ」として追っていくことで新たな発見があるのではないだろうか。
(文・久保加緒里/写真・川野結李歌)
臨済禅師1150年・白隠禅師250年遠諱記念
特別展「禅-心をかたちに-」
会期:2016年10月18日(火)~2016年11月27日(日)
会場:東京国立博物館 平成館
開館時間:9:30-17:00(入館は閉館30分前まで)
*金曜日と11月3日(木・祝)、5日(土)は20:00まで開館
休館日:月曜日
観覧料:一般1600円/大学生1200円/高校生900円/中学生以下無料
*各種割引についてはウェブサイトを参照
住所:東京都台東区上野公園13―9
お問合せ:03-5777-8600 (ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:http://zen.exhn.jp/
※会期中展示替あり
主な展示替:前期10月18日(火)~11月6日(日) 後期:11月8日(火)~11月27日(日)