デザインインフォメーション

2015.09.07

ブラジルが生んだモダニズム建築の巨匠
「オスカー・ニーマイヤー展」

Photo: Takashi Homma 2002

モダニズムの直線美と自由な曲線美が融合した数々の建物で知られるブラジルの建築家、オスカー・ニーマイヤー。彼の日本での初となる大回顧展「オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男」が、10月12日まで、東京都現代美術館で開催されている。巨匠オスカー・ニーマイヤーの建築自体や発想の手がかりや人物像など、見る側が入り込んで楽しめるような展示内容となっている。

 

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オスカー・ニーマイヤー《ニテロイ現代美術館》Photo: Leonardo Finotti

 

オスカー・ニーマイヤー《ブラジリア大聖堂》Photo: Leonardo Finotti

オスカー・ニーマイヤー《ブラジリア大聖堂》Photo: Leonardo Finotti

 

モチーフは、女性の曲線美!?

有機的で自由な造形をあますところなく紹介

 

「ブラジルのモダニズム建築の父」と呼ばれる、オスカー・ニーマイヤー。

 

展覧会では、2012年に104歳で亡くなる直前まで精力的に設計を手がけていた彼のデザイン活動が、主な名作の図面やスケッチ、精巧な模型、大きく引き伸ばされた写真、映像などを用いて紹介される。

 

会場デザインを手がけたのは、ニーマイヤーに多大な影響を受けて敬愛してきたという、日本建築界を代表するSANAA(妹島和世+西沢立衛)。白を基調とし、ダイナミックでモダン、かつ有機的な曲線で会場を構成する。展示する作品の選定などにも初期段階から関わったという。

 

地下2階の会場に下ると、プロローグとして小さな部屋で等身大のニーマイヤーと故郷のリオ・デ・ジャネイロの写真に出迎えられる。ここで流れているのは、彼の設計した現代美術館を空飛ぶ円盤に見立てて紹介する映像。

 

立ち上るスモークとともに、ニーマイヤーが登場する。「自分が心惹かれるのは自由な曲線。故郷の山々や川の流れ、海の波、女の体に見出す」という名言が早くも飛び出す。

 

続くスペースでは、大躍進のきっかけとなった「パンプーリャ・コンプレックス」が紹介される。湖の周りに教会やダンスホールなどを建設した公共プロジェクトだ。

 

また「カノアスの邸宅」という自邸では、巨大な岩を含めて元の地形が生かされている様子を見て取れる。すでに自由な曲線をもち、景観と一体となるような建築の姿が立ち現れているのだ。

 

有機的な造形は図面や写真だけではなかなか把握しきれないものだが、この展覧会では1/10〜1/200のさまざまなスケールで精巧な模型がつくられており、建築物をより身近に体感することができる。

 

オスカー・ニーマイヤー《コンスタンティーヌ大学》Photo: Leonardo Finotti

オスカー・ニーマイヤー《コンスタンティーヌ大学》Photo: Leonardo Finotti

 

オスカー・ニーマイヤー《サン・フランシスコ・デ・アシス教会》Photo: Leonardo Finotti

オスカー・ニーマイヤー《サン・フランシスコ・デ・アシス教会》Photo: Leonardo Finotti

オスカー・ニーマイヤー《カノアスの邸宅》Photo: Takashi Homma 2002

オスカー・ニーマイヤー《カノアスの邸宅》Photo: Takashi Homma 2002

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニテロイ現代美術館模型(縮尺 1/100)2015 Photo: 野口直人建築設計事務所

ニテロイ現代美術館模型(縮尺 1/100)2015 Photo: 野口直人建築設計事務所

 

アウヴォラーダ宮(大統領官邸)の柱模型(縮尺 1/2.67)  2015 Photo: 野口直人建築設計事務所

アウヴォラーダ宮(大統領官邸)の柱模型(縮尺 1/2.67) 2015 Photo: 野口直人建築設計事務所

 

家族連れも思い思いに楽しめる

楽しみ方いっぱいの巨大ジオラマ

 

中盤の見どころは、「過去を持たない未来都市」と呼ばれるブラジルの新首都・ブラジリアにまつわるプロジェクトの数々。都市の中枢となる建物のほとんどを手がけた。茫漠と広がる景色の中に点在する施設はそれぞれが、ユニークな形態をもち強烈な個性を放つ。

 

展示では、構造がそのまま外観の特徴となっている「ブラジリア大聖堂」「アウヴォラーダ宮」の柱が大きな模型で再現されている。また、主にブラジリア建設に関わる詳細なドキュメントが収められた映像が大スクリーンで上映。未開の地に乗り込み、3年半という短期間で数々の建物を実現したニーマイヤーの情熱と熱気に、引き込まれる。

 

続いて展開するのは、冒頭でUFOのように紹介されていた「ニテロイ現代美術館」の模型。断崖絶壁の岩場に立つ姿は、大地から咲く花をイメージしているという。ニーマイヤー自身がスケッチしながら解説する映像も横で流れていて、わかりやすい。

 

移動空間で流れているのは、この展覧会に寄せたメッセージビデオ。会場構成をした西沢立衛氏は「ニーマイヤーは度量が大きい。彼の設計した建築はいろんな意味で、そこにいる人全員に対して訴える力があり、勇気づける」と語る。

 

その西沢氏が最も感動したというリオ・デ・ジャネイロにある「イビラプエラ公園」の展示が、終盤のクライマックスだ。約500m²のアトリウムの大空間で、1/30の模型が大胆に展開される。

 

床に広がるのは、Google マップをプリントしたカーペット。自然の中に点在する建物が、中の人とともに模型で再現されている。写真を撮ると、妙な臨場感が出て面白い。

 

なお、この展覧会では特定の写真などを除いては会場内のスナップ撮影ができる。特に公園コーナーでは、幼児がここで自然とするようにハイハイで巡りながら、会心のショットを狙っていただきたい。

 

(取材・文/加藤 純)

 

ブラジリア大聖堂模型(縮尺 1/10)2015 Photo: 野口直人建築設計事務所

ブラジリア大聖堂模型(縮尺 1/10)2015 Photo: 野口直人建築設計事務所

 

パンプーリャ・コンプレックス模型(縮尺 1/50)2015 Photo: 野口直人建築設計事務所

パンプーリャ・コンプレックス模型(縮尺 1/50)2015 Photo: 野口直人建築設計事務所

 

カノアスの邸宅模型(ニーマイヤー自邸)(縮尺 1/20))2015 Photo:野口直人建築設計事務所

カノアスの邸宅模型(ニーマイヤー自邸)(縮尺 1/20))2015 Photo:野口直人建築設計事務所

コンスタンティーヌ大学模型(縮尺 1/300)2015 Photo: 野口直人建築設計事務所

コンスタンティーヌ大学模型(縮尺 1/300)2015 Photo: 野口直人建築設計事務所

 

 

 

イビラプエラ公園模型(縮尺 1/30) 2015 Photo: SANAA

イビラプエラ公園模型(縮尺 1/30) 2015 Photo: SANAA

 

オスカー・ニーマイヤー《イビラプエラ公園 講堂内部》Photo: Leonardo Finotti

オスカー・ニーマイヤー《イビラプエラ公園 講堂内部》Photo: Leonardo Finotti

 

オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男

会期:2015年7月18日(土)~ 10月12日(月・祝)

会場:東京都現代美術館 企画展示室地下2F

開館時間:10:00-18:00(入場は17:30まで。9月の金曜日は21:00まで)

休館日:月曜日(9月21日、10月12日は開館)、9月24日

入場料:一般1100円/大学生・専門学校生・65歳以上800円/中高生600円

/小学生以下無料 *各種割引についてはウェブサイトを参照

住所:東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)

電話:03-5245-4111(代表) / 03-5777-8600(ハローダイヤル)

http://www.mot-art-museum.jp

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