せきねきょうこの気まま旅
[第19回]キャメロン ハイランド リゾート ~キャメロン・ハイランド/マレーシア~
ミステリアスな逸話の残る爽やかな高原と美しいホテル
マレーシアといえば熱帯の暑さを思い浮かべる人も多いと思いますが、マレー半島には様々な顔があります。中央部に広がるパハン州には、なだらかな山々の連なる高原地帯が広がり、キャメロン・ハイランドというとっておきの避暑地もあり、マレーシアを代表する高原リゾートとして人気を博しています。平均気温20℃、爽やかな環境にはお茶畑のプランテーションやイチゴ畑など、豊富な種類のフルーツ畑が広がり、リゾート地らしい賑わいが見られます。その高原地帯の一角には、「キャメロン ハイランド リゾート」というコロニアルスタイルのリゾートホテルが佇んでいます。多くの歴史や逸話を秘め、格調高い趣を漂わせた高級感が魅力です。
ホテルのストーリーは1885年に始まります。英国の国土調査官ウィリアム・キャメロンが初めてこの地を訪れたことから土地名が付き、やがてホテル名として使われました。現在のホテル「キャメロン ハイランド リゾート」は、改装や改築を重ね2006年に開業しています。
ホテルの前にはゴルフ場が広がり、多くの日本人ゲストはこの公営ゴルフクラブでゴルフを楽しむ人々といいます。また、館内はすべてが木造りであることから、重厚感と温もりのある印象です。窓やドアのフレンチ様式、プランテーション様式の雨戸、フローリング、ベッドまで天蓋付きのコロニアル調です。
私を含め、このホテルでゲストが最も興味を抱くのは、1967年に起きたジム・トンプソン失踪事件でしょうか。米国人であるジム・トンプソンはタイで成功し、シルク王として世界に知られていました。キャメロン・ハイランドは、彼のお気に入りの休暇先であったと言われ、彼自身のセカンドハウスもありました。さらに、「キャメロン ハイランド リゾート」にも、しばしば安息に訪れていたといいます。そしてある日のこと、ジム・トンプソン氏は、この地キャメロン・ハイランドから突如として姿を消し、大掛かりな捜索もむなしく消息不明のままとなったのです。すべてが 謎となり、失踪や誘拐、暗殺、ジャングルでの遭難など、当然ながら憶測が飛び交ったものの、2019年現在もなお、真相はわからず謎のままにあるのです。日本では、作家・松本清張がこの事件を題材に小説「熱い絹」を書いたことでも知られていますが、本当のミステリーです。
現在、このリゾートでは、‘ジャングル・トレッキング’として、ジム・トンプソンが休暇に暮らした別荘「月光荘」までジャングルを歩くアクティビティがありますが、現在では家主が変わり、ひっそりと森に佇むその邸宅までは近づくことができず、遠目に見るだけになっています。
もうひとつ、魅惑のアクティビティが提供されています。リゾートから車で30分ほど山に入り、穏やかな山肌に広がるお茶畑の中で楽しむピクニックです。360度の景色が見渡せるなだらかな高原の頂で、前もってスタッフがピクニック用のシートを敷き詰め、暑い日差し除けの傘を用意し、食事や飲み物も準備されたところに到着します。贅沢で爽快なピクニックやアフタヌーンティーは、植民地時代の優雅なマダムたちを思い浮かべます。
文/せきねきょうこ
Photo:Cameron Highlands Resort
せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、現在、新刊出版を準備中。
Cameron Highlands Resort
39000 Tanah Rata, Cameron Highlands Pahang Darul Makmur, Malaysia
TEL: 605-491-1100 FAX: 605-491-1800
www.spavillage.com/cameronhighlands/index.htm
部屋数:59室
施設:ダインイングルーム、ジム・トンプソンティールーム、レストラン「ゴンベイ」、バー、ジム・トンプソンブティック、スパ・ビレッジ、ボールルーム、他
アクセス:クアラルンプール国際空港からは長距離バスかタクシーで90km《約3時間30分》。