せきねきょうこの気まま旅

2018.06.29

[第12回]ホテル・モンテ・ローザ
~ツェルマット/スイス~
万年雪に輝く白峰と大氷河、
山岳リゾートが華やぐ夏のバカンスシーズン

スイスのホテルらしくすべての窓にゼラニウムの花飾り。観光客のためと同時に、ハエが香を嫌い室内に入らないという説。

 

スイスの山岳地帯、老舗観光地のツェルマット(標高1620m)には、世界の登山家が険しいアルプスの登頂を目指し体を休めたホテルが存在します。数々の名登山家の登頂物語、世界の王侯貴族、セレブリティの華やかな休暇の滞在記録なども残る名ホテル「ホテル・モンテ・ローザ」です。

 

この老舗ホテルは、1853年、アレキサンダー・ザイラーにより、シンプルで質素な木造ロッジとしてオープンし、多くの登山家たちに愛されました。1860年からは、世界的なアルピニストとして知られるエドワード・ウインパーが定宿にしたことで世に知られました。1865年7月13日、ウィンパーはこの宿で準備を重ね、険しいマッターホルン初登頂に成功したストーリーが輝かしく残ります。ホテル・モンテ・ローザは彼の登頂成功以来、偉大な登山家の定宿として世界的な名声を得るようになりました。そしてスイスの登山黄金時代を支えたホテルとして、今なおパイオニア的存在となっているのです。

 

 

ホテル・モンテ・ローザのリッチな朝食は朝の冷たい空気の中でテラスが人気。

 

 

昔の名残を残して改装された山岳ホテルらしいレセプション。

 

 

山小屋の温もりある木造スーペリアルーム、家具・調度品・ベッドなどマテリアルはすべてが高品質。

 

 

ホテル・モンテ・ローザは、パイオニアとして知られるようになりました。黄金期と言われる19世紀末から20世紀にかけ、ベル・エポック時代と言われる頃になると、スイスのホテルではすでにブッフェやアフタヌーンティーなど、現代と変わらぬサービスが提供されたといいます。私は30年以上も前に初めてこのホテルに泊まり、夢多き登山家たちの想いを心にとめた感動を思い出します。現在もなお、日本からは多くの登山家やホテルファンが、この老舗ホテルを目指して泊まりに訪れています。

 

館内には昔から継がれる家具や調度品が残され、登山家の写真も当時の面影を残し貼られています。ホテルにレストランは3箇所、夏はテラスレストランも開業し、夕食時には夕陽に染まるマッターホルンを見ることもあります。

 

 

夏期のみ開業のテラスレストラン。室内にもテーブル席があるが、夏は外のテラスが人気。

 

 

テラスレストランから垣間見えた夕焼けに赤く染まったマッターホルン。

ツェルマットからマッターホルンの麓まで登る登山電車と終点のゴルナーグラード駅。

 

 

 

ツェルマットから登山電車の乗れば、マッターホルン(標高4.478m)の麓の駅ゴルナーグラートまで一気に昇ることができます。神々しさに溢れた山が見えてきたら、終着駅はもうすぐ。近くで見ると、天を突き刺すような雄壮な姿に圧倒され、輝く万年雪の見とれ、猛々しさには溜息がもれます。ヴァレー州に位置するツェルマットは、古くから環境保全を訴える村としても知られ、ガソリン車は商用車以外は村に入れません。ホテルの送迎は、今も電気自動車や馬車が対応し、その情緒溢れる光景が村の特徴的なシーンにもなっているのです。

 

 

ハイキングには最高の天気に恵まれた夏のマッターホルン付近。

 

 

(文/せきねきょうこ)

 

 

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、現在、新刊出版を準備中。
http://www.kyokosekine.com

 

Hotel Monte Rosa
Bahnhofstrasse80, CH-3920 Zermatt
Switzerland
Tel: +41-27-966-03-33
http://www.monterosazermatt.ch/en
部屋数:41
施設:レストラン、テラスレストラン、バー、ライブラリィ、会議室、他、スパ(姉妹ホテルMont CervinPalace提供)
アクセス:ツェルマット駅徒歩5分
問い合わせ先:直接現地へ、info@monterosazermatt.chまたは日本の各旅行代理店

 

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