せきねきょうこの気まま旅
[第15回]~ベルモンド・ヴィラ・サンミケーレ~フィエゾーレ/イタリア~
咲き誇る花に包まれ、丘の上からフィレンツェを一望
イタリアを旅する人が、一度は行きたいと願う美しい古都フィレンツェ。その街を離れ、北東に位置するなだらかな丘を登りきると、エトルリア人によって建設された小さな丘の町、フィエゾーレに到達します。フィレンツェよりも歴史の古い町フィエゾーレに近づいてくると、その道すがら、見晴らしの素晴らしい丘の頂に15世紀築の旧修道院、現在のヴィラホテル「ベルモンド・ヴィラ・サン・ミケーレ」が静かなたたずまいを見せています。
この急斜面に建つヴィラホテルからは、まるで絵葉書のようにフィレンツェの全貌が俯瞰で見渡せ、とりわけ世界遺産となっている旧市街の様子全体をも望め、美しい情景に飽きることを知りません。誰もが感動する息を呑むような景色の中で、ホテルの敷地にはイタリア式庭園が広がり、レモンやオリーブの木々、薔薇や数々の色の花が咲き誇っています。15世紀に建てられたヴィラ(旧修道院)のファサードは、かの有名なミケランジェロの設計によるものといいます。ホテルとなった現在でも、館内には、ルネッサンス時代の修道院を彷彿とさせる空間が残され、イタリアの歴史の中で、とりわけ繁栄を遂げた芸術の粋を肌で感じることになるでしょう。
斜面に建つヴィラの敷地最上部には屋外プールが造られています。夏のハイシーズンともなると、長逗留のヴァカンス客でプールサイドは賑わいますが、季節を問わず、景色のいいレストランではランチを楽しむ人が多くいます。そのメインダイニング「ラ・ロッシャ」は、ホテルが最も自慢とする場所です。ガラス窓のないオープンエアのコリドー(通路)で、そこに造られたアーチ型天井のテラス席は、週末など予約を取るのも難しいといいます。テラスに座り、美味しいイタリア料理に舌鼓。まさに時がゆったりと流れ、トスカーナ地方の小さな町ならではの至福の時が過ぎていきます。
ヴィラホテルらしい客室内は特注家具が置かれ、歴史や伝統に融合された斬新でラグジュアリーな空間が造られています。庭の一画には離れもあり、「リモナイア・スイート」として家族連れやハネムーナーに大人気。専用のプールも設置されたこのスィートは、まさにプライベート感満載の個人の別荘滞在のようです。客室とスィートを合わせ、全45室のヴィラホテル。朝に夕に、刻々と色を変える古都フィレンツェの街並みを眼下に、パノラミックに眺めながら、感動的な美食を満喫し、優れたサービスに癒される…こうした上質な休暇で味わう‘時の流れ’こそ、フィエゾーレに向かう最大の歓びではないでしょうか。
(文・写真/せきねきょうこ)
せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、現在、新刊出版を準備中。
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