せきねきょうこの気まま旅

2017.11.24

[第5回] タージ・ファラクヌマパレス・
ハイデラバード/インド
栄華を誇ったかつてのマハラジャ
インドの歴史遺産を今に残す豪華な館に滞在

世界三大パレスのひとつと謳われている「タージ・ファラクヌマ・パレス」。インド中南部ハイデラバードにあるこの豪華なホテルは、デカン高原の小高い丘にそびえるように建っています。18世紀、この町を統治したマハラジャの君主が居住していた宮殿ですが、ホテルとしての開業は2010年。完成までに15年の歳月をかけたパレスはまさに圧巻の豪華さでした。

 

(上)パレスのメイン棟。内部にはロビー、バンケットルーム、101ダイニングルームなど主たる設備がある。
(下)最初に到着するメインゲート。ここから馬車に乗り換えて館まで移動。

 

豪華な館はすでにエントランスから非日常

歓迎の真紅のバラのシャワーが待ち受ける

 

インド中南部に位置するデカン高原に、現在、インドでは珍しい‘双子都市’と言われるハイデラバードがあります。

 

大きな市場や土産店、路上の果物売りなど、昔ながらの庶民の賑わいを残すハイデラバードと、世界的なIT関連の企業進出で躍進目覚ましい新市街シカンダラバードに分かれているため、まったく異なる街の表情を見せています。

 

紀元前2600年のインダス文明に起源(有力説)を発するインドにおいて、町の誕生後500年という歴史は浅いといわれるハイデラバード。そのハイデラバードの一画にある小高い丘に、世界三大パレスのひとつと謳われる「タージ・ファラクヌマ・パレス」がそびえています。

 

ゲートまで出迎えをする2頭立てロイヤルスタイルの馬車とバトラーたち。

 

「The 101 Dining Room」と呼ばれるバンケットルーム。31mのテーブル、101の椅子、5個のベルギー製シャンデリアが輝く室内では、かつて華燭の典が開催されていた。

 

18世紀、この町を統治し始めたニザーム(この地方ではマハラジャをこう呼ぶ)の9代目藩王国君主が、1911年に逝去するまで居住していた宮殿であり、現在はホテルとして、一部を開放し観光客を受け入れています。ホテルとしての開業は2010年11月。改装しながら居住もあるという、完成までに15年の歳月をかけたパレスは圧巻の豪華さです。

 

丘の下に広がるハイデラバードの雑踏を抜け、車で旧坂を上り詰めると真っ白な正門に到着します。ゲートをくぐるとほぼ同時に、館まで移動する迎えの2頭立て馬車がやってきます。

 

すでにエントランスから非日常、映画の世界に入り込んだような趣です。到着すると、歓迎のために真紅のバラの花びらシャワーが待っていました。そして馬車を降り、担当バトラーから手渡されたのはピンクのシャンペンのウェルカムドリンク。到着時の儀式はすでに衝撃的でした。

 

ひとつとして同じタイプはない広くて贅沢な造りの客室。

 

700年の歴史あるイスラム宗教音楽を歌うストリートミュージシャン。

 

かつてのマハラジャの威厳が蘇る宮殿内には

イスラム宗教音楽の情熱的な歌声が響き渡る

 

パレスの敷地は約22万6600㎡(東京ドーム約5個分)に及び、館のどこかでは、終わりの見えない改装が続けられているといいます。幾つもの棟が敷地内に点在し、客室棟の他、ロビー棟にはバンケットルーム、テラス、プレイルーム、ジェイドルームなど、そして他に美食のダイニングルームも別棟にあるなど、過去のマハラジャの威厳や贅沢な暮らしぶりがうかがえます。

 

夕暮れ時にはハイティーに続き、毎日、イスラム信徒による宗教音楽のパフォーマーたちが町から呼ばれ、宮殿内には700年もの間継承されるという情熱的な歌声が響き渡ります。

 

また食事はインターナショナル料理や数々のカレー料理、郷土料理のビリアニなど本場のインド料理が揃い、いずれも絶品です。さらにバトラーサービスでの距離の近いもてなし方は、贅沢な暮らしを満喫したかつてのニザームのように、パラスでしか味わえない夢のような体験でした。

 

テラスで朝日を浴びながら町を遠望しての快適な朝食。

 

インド郷土料理のカレーをベースにした新しい感覚のランチ。

 

そんな体験を現実へと戻してくれるのは、庶民の街ハイデラバードの旧市街です。人と肩を擦れ合うような賑々しい旧市街には、4つの尖塔を持つチャール・ミナール(シンボリックな塔)がそびえ、その周辺には多くの店舗や路上の屋台が肩を寄せ合うようにひしめき合っています。

 

また細い裏通りには、伝統の鍛冶屋、絨毯職人、染め物、インド名物バングル(腕輪)屋など、どれも小さな工房から世界に輸出されている特産品です。かつて歴史を飾ったマハラジャの存在は、カースト制度が撤廃された今もなお、ライフスタイルの中にその存在が刻印されたかのように残っているのです。

 

(文・写真/せきねきょうこ)

 

小高い丘にそびえるファルクヌマ・パレスの夕暮れ。

 

Photo: Kyoko Sekine

 

せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、2018年春の新刊出版準備中。

http://www.kyokosekine.com

 

 

 

Taj Falaknuma Palace Hyderabad

(タージ・ファラクヌマ・パレス、ハイデラバード) 

住所:Engine Bowli,Falaknuma. Hyderabad. Andhara Pradesh, 500053 India

電話:+91-40-6629-8585

客室数:60室(内スィート15室)

施設:レストラン、バー、バンケットルーム、ラウンジ、スパ、庭園、プール、バンガロウ(ダイニングテラス)、101ダイニングルーム、ホール、他

アクセス:ハイデラバード国際空港から車で約20分

http://t.co/zCmP4pP3dH

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