せきねきょうこの気まま旅
[第20回]インディゴ・シンガポール・カトン ~シンガポール~
シンガポールに育まれた伝統’プラナカン文化’を踏襲
旧正月で賑わう2月初旬のシンガポール。中国系、マレー系、インド系、ユーラシア系、アラブ系など、多くの民が住むモザイク国家と言われるように、多民族国家として知られたシンガポールは、本島の他に、極小の島を60以上も含むという島国である。赤道直下にあることから、外は常に暑い気候で、乾季冬季に分かれるが、湿度の多い26~30℃前後の気温である。建物内ではガンガンとクーラーをつけ寒いくらいなので、服装にも注意がいる。
何度も訪れていたにもかかわらず、知らなかったのは、「シンガポール」の名は、サンスクリット語で「シンハ(椰子)」を意味する言葉が語源だということ。私だけでなく、案外知られていないことかもしれない。そのシンガポールで特異な文化として残されているのが、‘プラナカン’と呼ばれる人々と、彼らの特異なライフスタイルである。プラナカンとは、15世紀後半にマレー半島に移住した中国人と、マレー系の女性との間に生まれた子供の子孫たちを指している。彼らは中国に戻らず、マレー半島に居住し続け、シンガポールに於いて欧州文化と融合した独自の文化を作り上げたという歴史がある。それをプラナカン文化と呼んでいるのだ。
このプラナカン文化を色濃く反映させ造られたのが「ホテル・インディゴ・カトン」であり、カトン地区の中でも最もプラナカンの文化遺産が多く残るジョー・チャットに建っている。
開業は2016年7月5日。インディゴは、その土地の文化を踏襲した斬新なデザインを掲げ、カジュアルでパーソナルなサービスをモットーとしている。実は、IHG(インターコンチネンタル・ホテルグループ)のブランドのひとつでもあり、人気の高いブティックホテルである。これまでに、パリや香港の同ブランドに泊まったいるが、いずれもコンセプトが明快で面白い。
ここシンガポールでも、ご当地文化としてプラナカンのアートや伝統を館内にぎっしりと詰め、パステルカラーをふんだんに使ったカラフルな家具調度品や、壁の模様、ランプなどがヴィヴィッドな意匠が明るさを演出している。実際に、プラナカンの一般的な伝統家屋はプラナカンハウスと呼ばれ、間口は狭く、奥へ奥へと細長く伸びる、まるで日本の京都の町家のようである。そして、ホテル内にあるレストラン&バー「Baba Chews & Bar」の建物部分は、シンガポールの保存建築物「ジョー・チャット旧警察署」だったという。
レストランでは、中華料理、シンガポール料理、インド料理、そしてマラッカ海峡の伝統料理などカジュアルなメニューのオールディダイニングであり、もちろんプラナカン料理も提供している。因みにプラナカンの子孫たちは、男性をババ(Baba)、女性をニョニャ(Nyonya)と呼び、ここでは男性呼称をとってレストラン名がつけられている。ホテルのクオリティはなかなかで、リーズナブルな料金はマネー・フォー・ヴァリュー。快適であり、食事も美味しく、カジュアルなホテルでありながら、上質なサービスが際立っていた。
文/せきねきょうこ
Photo:Hotel INDIGO SINGAPORE KATONG
せきねきょうこ/ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て1994年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数、現在、新刊出版を準備中。
Hotel INDIGO SINGAPORE KATONG
86 East Coast Road, Singapore 428788| Singapore|
TEL: + 65-6-7237001
https://www.ihg.com/hotels/jp/ja/singapore/sinki/hoteldetail
客室:131室
料金:ワンベッド237.5.SDG~、ツインベッド247.SDG~、(2月ベストレート参考価格)
施設:レストラン&バー、ラウンジ、会議用スペースフ、ィットネスジム、屋上スイミングプール、他
アクセス:チャンギ国際空港から11㎞(約15分)