世界のデザイン空間

2012.09.18

自然とアートと建築による創造的空間
「軽井沢千住博美術館」

美術作家・千住博氏と建築家・西沢立衛氏との夢のコラボレーションで完成した「軽井沢千住博美術館」。軽井沢の美しい森の中にアートと建築が一体となった空間は、まさに自然と文化が調和した創造的な新しい世界を実現した。

 

 

 

 

軽井沢の光、風、自然の中に完成した

明るく透明感の高い美術館という名の作品

 

世界的に活躍する美術作家、千住博氏の作品約100点を所蔵する美術館が、軽井沢に誕生した。

 

植栽の合間から見える建物の低い軒先を回りこみエントランスを入ると、千住氏の代表作である「ウォーターフォール」に正面で出迎えられる。同時に、来訪者はこれまで目にしたことのない、透明感のある拡がりと対面することになる。

 

空間は区切られずにひとつながりで、グレーの床が奥に向かって緩やかに段差無く下っていき、緑の植えられた中庭を通して視線は空に抜けていく。そして、点在する白い壁に据えられた作品に意識が戻ってくる。

 

それらの作品を見ようと歩を進めると、床が傾斜している様子が足裏を通して伝わってくるが、特に不自然な感じは受けない。しばらく進むと、天井高も場所によって緩やかに変わっていることが分かる。

 

この美術館の設計は、西沢立衛氏。妹島和世氏とのユニットSANAA(サナー)で建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を受賞した、こちらも世界的に有名な建築家である。千住氏の「明るく開放的で、今までなかったような美術館を考えられないか」という要望に応えて生み出されていったこの美術館。美術館自体が、二人のコラボレーションによる新しい作品なのである。

 

建物の外周は曲面を描くガラス張りで、シルバースクリーン越しに周囲の風景や緑、光が室内に柔らかく入ってくる。そして、館内4カ所にはガラス張りの中庭が挿入され、ここからも自然光が取り込まれている。UVカットガラスが採用され、日よけスクリーンがガラスに沿って設置されているが、自然光が入ってくる美術館というのもまた珍しい。

 

中庭のガラスも曲面を描いているので、床や天井の傾斜に合わせて据え付けることはどんなに難しいことかと想像される。しかしとても綺麗につくってあり、サラッと素っ気なく見える。裏をかえせば、来館者にはつくり手の苦労を一切感じさせず、作品に集中してもらおうという建築家の熱意や凄みが伝わってくるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エントランスを入った周辺では、千住博氏の代表作「ウォーターフォール」のシリーズ作品数点が展示されている。

撮影:阿野太一 ©軽井沢千住博美術館

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千住博氏と西沢立衛氏のコラボレーションで実現した明るく開放的な空間。

撮影:阿野太一 ©軽井沢千住博美術館

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空間は区切られずにひとつながりで、グレーの床が緩やかに段差無く下っていく。

撮影:阿野太一 ©軽井沢千住博美術館

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蛍光塗料による作品とブラックライトによるブルーのライティングが、幻想的な雰囲気を醸し出す展示スペース。

撮影:阿野太一 ©軽井沢千住博美術館