世界のデザイン空間

2012.08.27

発展するベトナムを象徴する超高層ビル
ビテクスコ・フィナンシャル・タワー

目まぐるしく発展を遂げるベトナムの商都、ホーチミンに、新たな街の顔となる超高層ビル(スカイスクレイパー)が誕生した。銀行などが軒を連ねるビジネス・ディストリクトに完成した「ビテクスコ・フィナンシャル・タワー」で、ホーチミンで1番目の高さを誇る。

 

 

 

 

混沌のホーチミンに咲くロータス・フラワー

流れる雲が映り込む超高層の摩天楼

 

発展著しいベトナム とはいえ、“超”高層ビルが林立しているわけではないホーチミンで、 地上265.5メートルの超高層ビルは抜きん出て高い。そしてただ高いだけでなく、そのデザインにおいても他に例を見ないユニークさを誇っている。

 

CNNのトラベルガイド「CNN Go」が発表した「世界の偉大な超高層ビル20」において、ペトロナス・ツインタワーやブルジュ・ハリファを抑えて、堂々の第5位にランクインされているこの「ビテクスコ・フィナンシャル・タワー(以下BFT)」なのである。

 

その天に向かってすらりと伸びた優美なシルエットのモティーフは、ベトナムの国花である蓮の花だという。しかしそれはふっくらと咲き誇った花ではなく、泥の中からすっくと茎を伸ばした清々しい蕾を写しているようだ。

 

そう言われてあらためて眺めれば、ヘリポートから上の先端辺りは、今まさに花開こうとしている花びらの重なりに見えなくもない。

 

設計者はニューヨークを拠点に活動しているカルロス・ザパタ氏。彼はこのデザインで、蓮の花の生命力に成長し続けるホーチミン──ベトナムの姿を重ね合わせた。

 

タワーは正円の円錐形ではない。基部はほぼ菱形をしており、それが高層階にいくにつれ次第に細くなり、ヘリポートを支えるように逆円錐状の張り出しがつく辺りから、逆サイドへと中心が傾いていく。

 

見る方角によってはヘリポートの見え方は変わり、場合によってはまったく見えなくなる。それだけではなくタワーの“太さ”もかなり変化する。また角度によっては傾いているかのように見えるから不思議だ。

 

 

 

 

ホーチミンの市街地の真ん中にそびえるように建つビテクスコ・フィナンシャル・タワー。

天に向かってすらりと伸びた優美なシルエットのモティーフはベトナム国花である蓮の花。