世界のデザイン空間

2012.08.27

発展するベトナムを象徴するように、摩天楼を思わせるテクスコ・フィナンシャル・タワー。

 

 

 

 

都市化するホーチミンを代表するランドマーク

49階「サイゴン・スカイデッキ」から見下ろす景色は絶景

 

 

一見シンプルな形態に見えるのだが、実は先端部ではさまざまなジオメトリックな形態が複雑に組み合わされており、ヘリポートから上の階は削ぎ落されたように全体が弓状に反ったかたちになっている。

 

その縁の傾斜の角度に沿ってガラスのカーテンウォールのラインが低層階へと伸びていく。このラインで囲まれた壁面が、その内側に畳まれた花びらを守る蓮の花の萼(がく)のようにタワーの片側半分を覆っている。

 

このBFTは、低層階以外は基本的にオフィス用途のビルのため、高層階の内部は外部の者にはうかがい知る術がないのだが、そこにはちゃんと展望スペースが用意され一般の入場者を受け入れている。49階に位置する「サイゴン・スカイデッキ」がそれだ。

 

もちろん展望フロアなのだから外を眺めるためのものだが、曲面になったグラスウォールやタワーを貫く柱の位置など、タワーの内側も少なからず垣間見えて面白い。ヘリポートは上階にあるため、それを間近に見られないことだけは残念なのだが。

 

このサイゴン・スカイデッキからホーチミンの街を一望するのは楽しい。天候が許せばかなり遠くまで見渡すことができるし、何より眼下に広がるホーチミンの中心部をほぼ真上から見下ろすのは得難い体験である。

 

有名なベンタイン市場や人民委員会庁舎などのオレンジ色の屋根が、南国の強い日差しを照り返して輝くようすを見るとき、仏領時代のクラシックと先鋭的な現代建築のコンビネーションこそが、まさに現在のベトナムの縮図だということがわかるだろう。

 

(文/入江眞介)

 

 

 

 

 

タワーは高層階にいくにつれ次第に細くなり、逆円錐状の張り出しがつく辺りには円形のヘリポートが支えられている。

建設途中のビテクスコ・フィナンシャル・タワー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

49階の「サイゴン・スカイデッキ」。どこか東京スカイツリーの展望デッキを彷彿させる雰囲気だ。

「サイゴン・スカイデッキ」からは、天候が許せばホーチミン市街を見渡すことができる。