世界のデザイン空間

2012.04.12

ソフィスティケートされた インドの最高級ホテル ウェスティン・グルガオン、 ニューデリー

インド・ニューデリーに2010年にオープンしたウェスティン・ホテル。インドの伝統を踏まえたコンテンポラリーなデザインは、発展するインドを象徴しているかのようだ。商業施設をデザインしたのは日本人、杉本貴志氏。インド的な賑やかさを感じさせつつも、落ち着きのあるテイストに仕上げられたスタイリッシュなホテルだ。

 

 

 

 

 

現代インドの最新ホテルにステイする

 

首都、ニューデリーから南西へ約35kmのハリヤーナー州に位置する衛星都市、グルガオン。しかし、この街はただのベッドタウンではない。数々の外資系企業がそのヘッドクォーターを置くビジネスの要衝であり、さらにブランドショップが軒を連ねるショッピングモールもあまた擁する。勃興するインドのきらびやかな部分を体現する都市と言っていいかもしれない。

 

そのような街には当然ホテルが、それもインターナショナルでハイクラスなものが必要になる。建物全体が大きく弧を描いたコンテンポラリーなデザインが特徴的な「ウェスティン・グルガオン、ニューデリー」は、まさにこの街の顔となるホテルの一つ。

 

客室もテキスタイルなどのパターンに、わずかにエスニックなテイストが感じられるものの、全体としてはニュートラルなトーンでまとめられている。ただ、部屋のカラーが全体的に明るいのはもしかするとインドらしさなのかもしれない。

 

快適な部屋はもちろんのこと、ホテルでの滞在に欠かせないものがダイニング。このウェスティン・グルガオン, ニューデリーの主要な飲食施設をデザインしたのは日本人の杉本貴志氏である。

 

その一つ、終日オープンの「Seasonal Tastes」は、インド的なカラフルさに彩られたレストラン。インターナショナル・スタイルの食事を自然光が降り注ぐなかで楽しめる。そのカラフルな壁面だが通常インテリアには使われない、民族衣装のサリーを染める天然染料が用いられているのだとか。

 

面を構成する一つひとつの角材はそれぞれ異なった色に染められて、インド的な賑やかさを感じさせつつも、杉本貴志氏率いるスーパーポテトらしい落ち着きのあるテイストに仕上げられている。

 

インターナショナルな料理を楽しめる「Seasonal Tastes」。壁に民族衣装サリーを染める天然染料を用いられている。

天井高約9mの空間の中にあらゆる色が存在するように、木の角材を一本一本染色して組み合わせた壁を構成している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アジアの味覚を洗練された空間で味わう

 

ラウンジ&バー「Mix」のいちばんの特徴は、何と言っても15トンを超える重量を持つバーカウンター。直径1.8mもの巨木から削りだされたこのカウンターを中心に構成された空間は、同じように壁や天井にも木材が用いられシックさが漂うなかにも温かみが感じられる。

 

この巨木がはるばる運ばれてきたアフリカ、コンゴの地に思いを馳せて嗜みたいのが、3種類の特別なカクテル。それぞれに現地の言葉の名前がついたこれらのカクテルは、売り上げの一部が緑化を目的とした活動に寄付されるという。

 

もしもインド料理に飽きたなら東アジアの多国籍料理を供するスペシャリティレストラン、「EEST(イースト)」がある。中華料理を筆頭に、タイ、ヴェトナム、韓国、日本というバリエーションのなかから好きなものをチョイスしたなら、それらをインド、中国、そして日本のスタイルが混在する空間で堪能したい。

 

寿司バーや各国風の個室の他にも、広い空間をセミプライベートに区切った落ち着きのある店内は、スーパーポテトならでは。ちなみにその間仕切り壁は、インドの古い鉄板を再利用したものだそう。

 

残念ながら、どうしても食事の場所に気を使わざるを得ないかの国で、滞在先にこれだけ充実したダイニングが揃うとなれば、心配事の半分はもう解消したようなもの。デリー観光の拠点はこのウェスティン・グルガオン, ニューデリーをおいて他にはあるまい。

(文・入江眞介)

 

ラウンジ&バー「Mix」。直径1.8mもの巨木から切り出されたカウンターが印象的だ。

直線を強調してデザインされた木材を用いてシックな雰囲気を演出。