丸の内スペシャル行ってみたいデザイン空間
[丸の内スペシャル]
丸の内の歴史的シンボル
「三菱一号館美術館」
英国の様式美をもった丸の内初のビル
美術館として復活しオフィス街から文化を発信
高級ブランドショップも立ち並ぶ丸の内のオフィス街。現代的なオフィスこのエリアの一角で、クラシックな赤レンガの3階建ての建物が目を引く。ここはもともと「三菱一号館」として1894(明治27)年に建設された、丸の内初のオフィスビルであった。
設計は英国人建築家のジョサイア・コンドル。建築様式は19世紀後半の英国で流行したヴィクトリア時代のクイーン・アン様式。地下1階・地上3階のレンガ組積造で、地震の多い風土に合わせて耐震性を高める工夫がされていた。
“最先端”の洋風事務所建築は文明開化の象徴的な存在となり、次々とレンガ造りの建物が並ぶように。この界隈は「一丁倫敦(いっちょうロンドン)」と呼ばれるまでにもなった。
その後1968(昭和43)年には老朽化のために解体されて消失したが、なんと40年あまりの時を経て同じ地で、コンドルの原設計に則って蘇った。
明治期の設計図や解体時の実測図、各種文献、写真、保存部材などに関する詳細な調査が実施されて復原されたという。約230万個におよぶ赤レンガは、当時にできるだけ近い製法つくられて積み上げられた。
2010年4月より美術館としてオープンしたこの建物は、オリジナルの構造や構成が感じられるように、実に繊細な手法がとられている。
まずはレンガの組積造部分を改変せずに耐用年数を長くし、また美術館として使うために免震構造を採用。そして、オリジナルに付け加えなければならない場合は、あえて現代的な素材やデザインが採用されている。
たとえば、バリアフリーなどのために中庭側にもエントランスアプローチを設ける必要があったため、この部分はガラスのボックスがレンガの建物に差し込まれたような格好に。こうすることで、忠実に復原されたオリジナルがどの部分か、またどのようになっていたかがいっそう鮮明に感じられるのだ。
丸の内の歴史を伝える三菱一号館美術館。レンガ造りの英国の様式美をもった丸の内初のビルが美術館として
現代に蘇った。
中央階段。手すりの一部灰色に見える部分は、伊豆の青石で作られた旧三菱一号館の保存部材。復元にあたっては中国の五雲石が使われた。
設計は英国人建築家のジョサイア・コンドル。2階南側の中央廊下にも英国の伝統を感じる。
旧三菱1号館解体時の写真と当所図面との照合によって復元された鉄骨階段。蹴上げ部分に透かしを入れて、室内まで光が入る仕組みになっている。
(左)復元された屋根裏の構造。小屋組みには松材を使用し、接合部分の黒い金具も解体時の写真資料を元に復原されている。(右)館内の随所に、19世紀後半の英国で流行したヴィクトリア時代のクイーン・アン様式を見ることができる。