世界のデザイン空間

2012.12.25

パリ本館以上に現代的な建物はランスでも大きな話題になっている。

Photographie © Iwan Baan

 

 

 

自然光を取り入れ、時代ごとに展示させたギャラリー空間

来場者は歩きながら時代の変遷を体感できる

 

ルーブル・ランスには、大きく2つの展示スペースがある。特に見所となるのは「Galerie du temps(時のギャラリー)」。130mにもわたるスペースには柔らかい光が充満し、そのなかで作品を鑑賞するという未体験の感覚が味わえる。その光は、天井に連続する薄いフィンのような梁の間から入ってくる自然光によるものだ。

 

コンクリートの床のほか、外壁に使われているアルミのパネルが展示室の壁にも使われ、光を柔らかく反射して展示物がそっと浮かび上がるように意図されている。美術館で太陽光を取り入れることはかなり珍しいが、緯度の高いこの地方での美しい光を最大限に活かすよう、きめ細かく設計されているのである。

 

展示方法もユニークなもの。パリのルーブル美術館の傑作が5年間貸し出され、古代美術70作品、中世美術45作品、近代美術90作品の205点が、大きく3つの時代に分けて展示される。特定のジャンルで分けるのではなく、文字が誕生した紀元前3500年頃から19世紀半ばまで、同時代のさまざまな文明・文化から生まれた作品を横並びで見せる方式。

 

たとえば、紀元前5世紀の古代ギリシャの作品が、同時代のペルシャ帝国やファラオ時代のエジプトの作品と隣り合う。こうすることで、鑑賞者は同時代の技術や文明などを比較しながら、芸術の歴史を概観することができる。

 

長大なスペースと展示方法をうまく絡めた、体験型の展示空間といえよう。ルーブル美術館から貸し出されるコレクションは、5年ごとに2割の作品を入れ替えながら展示される予定というから、いつ訪れても新鮮な発見があるはずだ。

 

オープンに合わせて、ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」をはじめ、数々の傑作や巨匠の作品が展示されている。パリ本館以上にモダンなルーブル・ランス。ヨーロッパに訪れる際にはぜひ少し足を伸ばして、環境と歴史との融合によって生まれたこの美術館を体感していただきたい。

(文/加藤 純)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柔らかな自然光を取り入れた美しいギャラリー空間。

Photographie © Musée du Louvre-Lens / Philippe Chancel

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紀元前から19世紀までの美術品の変遷を歩きながら体験できる。

Photographie © Iwan Baan

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自然光が壁のアルミのパネルに反射して美術品を浮かび上がらせる。

Photographie © Iwan Baan

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリ本館の傑作を5年間貸し出すという展示方法もユニークだ。

Photographie © Musée du Louvre-Lens / Philippe Chancel

 

 

 

 

 

 

ルーブル美術館別館/ルーブル・ランス(Louvre-Lens)

Rue Paul Bert, Lens, 62300, France

開館時間 :10:00〜18:00 (最終入場時間 17:15)

休館日:火曜、5月1日

http://www.louvrelens.fr/