世界のデザイン空間
モザイク状のファザードの可能性から
アジア的平和なデザインが出現する
この”塔の村”の上空から地上へと視線を向けると、高層ビルの下層階では2棟が1つに繋がっている。アトリウムによって結びつけられたそれら商業エリアス ペースは、敷地を埋めるように配され、その中央にはオープンエアの広場が、さらにその中心には川が流れている。この光景はまるでコロラド川が悠久の時間を かけて大地に谷間を穿った、グランドキャニオンのようだ。そう言えば、ビルのファサードは地層に見えなくもない。
ファサードのモザイク状のパターンは三里屯Villageでも用いられているが、今回はさらに洗練を加えたかたちで取り入れられた。周囲のビルを控えめに 彩り、その中心に位置するビルをオレンジ色で包んだのも鮮やかだ。そのファサードで高層ビルの表面に「粒子感」を与え、ひいては「アジア的平和」を出現さ せることを目指したと隈研吾氏は語っている。
高層ビルを含む巨大商業施設は、1本の抜きん出て高い塔にアトリウムの組み合わせというスタイルが多い。それを”西洋的リーダーシップ型”とすれば、三里 屯SOHOはそれに対する批評なのだ。それぞれ似通ってはいるが、かといってまったく同一でもない9本の塔からは、確かに共同体的な連帯感が感じられる。 そんな「平和で寛容な集団のあり方」を中国に現出させたこと自体、氏の”批評”と取っては勘繰りが過ぎるだろうか。