ライフスタイリスト

2012.06.01

あらゆる可能性を探りながら、
都市を彩る
デザインを考える

文田昭仁氏

空間デザイナー

 

都市のさまざまなシーンで近未来的なデザインを展開し続けている、日本を代表する空間デザイナー・文田昭仁氏。高感度なデザイン・コンセプトや、都市でのライフスタイルの在り方についておうかがいした。

 

 

 

既存のイメージを超えて

あらゆるデザインの可能性を追求

 

日産銀座ギャラリー 2001年

日産グローバル本社ギャラリー 2010年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――文田さんが手がける空間デザインはさまざまな分野にわたっていますが、デザインで心がけていらっしゃることは。

 

まずクライアントさんの思いをお聞きして、僕に対してどんなことを期待されているのかをうかがうようにしています。そして僕の方からデザインの提案でお返しする時は、なるべく既存の意味を剥ぎとって、原点に立ち戻って考えるように心がけています。与えられたテーマを自分の中で何度も捉え直して、あらゆる可能性を探り出すことを心がけています。 デザインのスタイルを固めたくないというのがあるので、敢えて出すことはしません。でも、たとえばギタリストに演奏癖があるように、違うフレーズを探そう思っていても、つい自分のフレーズが出ることってありますよね。それと同じように、どこかに僕のスタイルは出ているのかもしれませんが、常にさまざまな可能性を考えてデザインしています。

 

 

――その意味でもグッドデザイン賞など多くの賞を受賞した日産銀座ギャラリーは、文田さんの世界が大きく広がった出世作だといえます。

 

そうですね、日産銀座ギャラリーが、僕の強い部分が一番、濃縮されて出た作品だと思いますね。多分、それまでやりたかったことが盛りだくさんあったのが、あそこで一気に表現されたと思っています。ただし、これを自分のスタイルとして固めてしまったわけではないので、ある一つの解答だと理解していただければと思います。

 

建築的に定められた3次元空間の内側をどう構成していくかということになります。その3次元空間をなぞるように付加価値を付けて、雰囲気を作りあげるような手法が一般的ですが、僕は逆に与えられて空間を単なる固まりだと考えて、その固まりを削り取っていきながらデザインしていく。ある部分は残して、ある部分は膨らませていくということを日産銀座ギャラリーでは考えました。

空間のもっているポテンシャルみたいなものを、いったん距離をおいて違う方向から見てみる作業がとても大切です。パッと見て反射的にアイデアが浮かぶということはありますが、それをもう一度、疑ってみる。この考え方を逆にしたらどうなるのか。新たな方法論を組み立てられないのか。そういうことを考えながら、あらゆる可能性を探るという僕のスタンスが、日産銀座ギャラリーでは大きく反映されたと思っています。