アーティストインタビュー

2012.11.19

 

三重県菰野町にオープンしたばかりの「AQUA×IGNIS(アクアイグニス)」のエントランスホール。壁のデザインをミヤケさんが手がける。京都の唐紙の老舗「かみ添」さんと協力して作り、鉄のモチーフの影と光で空間を表現した。

 

 

「AQUA×IGNIS(アクアイグニス)」では

火と水と食と人をつなげた、地域に根付いた「場所」をつくりあげた

 

――10月にオープンした三重県菰野町の「AQUA×IGNIS(アクアイグニス)」では、作品のみならず、アートディレクションにも携わっていますね。

 

最初は、大掛かりに関わる予定ではなかったんです。「片岡温泉」という地域密着型の日帰り温泉がリニューアルすることになり、レストランや宿もつくることになった。そこに作品を入れさせてほしい、というのが当初の依頼でした。

 

作品が唐紙からつくる壁面構成で出来ているものなので、建物との調和が大切だと思い、どんなインテリアになるのかうかがったら、「まだ決まっていない」と……。「誰か、いい人がいたら紹介してください」と言われたことからはじまり、わたしが今回のプロジェクトに適任だと思うデザイナーやアーティスト、ブックコーディネーターをご紹介したことから、なりゆきで全体のディレクションまでやらせていただくことになりました。

 

もともと地域の人が通う日帰り温泉だったので、ローカルな人とのコミュニケーションが生まれる場所にしたいと思いました。クリエイターのみなさんと一緒に、地域に根ざした食と水、火、人をつなげることを話し合いながら考えていきました。

 

わたし自身の作品は、エントランスとロビー、リラクゼーション施設、トイレに設置されています。広い壁面を唐紙で覆って、そのうえに鋳物のオブジェをのせました。唐紙は、京都の「かみ添」さんにご協力いただいて、わたしがデザインした文様で木版をつくり、白い和紙に「胡粉(ごふん:貝殻を粉にした顔料)」を使ったり「雲母引き(きらびき:鉱物の雲母を粉にした顔料を塗る技術)」をしたりして、刷り上げました。

 

白い唐紙と黒い鋳物のオブジェが、光の当たり方によって刻々と表情を変えていく光と影の作品です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無形のものを可視化していくというコンセプトや、いくつものレイヤーを重ねていくという技法は、ミヤケさんの作品に共通しているもの。

季節、天気、時間……。さまざまな条件によって生み出される光と影が、一瞬の作品をつくりあげていく。

「アクアイグニス」写真/ Nacasa&partners Inc. Satoshi Shigeta

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2008年の「黄金町バサール」では、古い呉服屋さんを再生する

プロジェクトで参加した。

「黄金町バザール」写真/©2007 by Nakagawa Chemical, Inc.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2011年の「アートフェア香港」では、明代の家具とともにインスタレーションを発表。

会場:Hong Kong Convention and Exhibition Centre(香港)

「アートフェア香港」写真/ 左:Yasuhide Kuge、 右:Nacasa&partners Inc. Satoshi Shigeta