アーティストインタビュー
日本の伝統的な昔話を現代アートで表現する
平良美樹さん 現代美術アーティスト
■プロフィール
1984年、東京生まれ。1990年から書道を習い始める。2006年、東京学芸大学教育学部・芸術文化課程書道専攻卒業。『GEISAI#10』で銀賞受賞。2007年、『内なる領域』(東京画廊+BTAP、東京)。2008年、『NETWORK PROJECT JAPAN』(Inter alia Art Company、ソウル)。2009年、『A trace of 10years in Gallery Den』(Gallery Den、東京)。2010年、『ミクロサロン 60』(東京画廊+BTAP、東京)。2012年、『イキモノ譚』(東京画廊+BTAP、東京)。
柳田国男の文庫と出会ったのが
日本の昔話をアートで表現するきっかけ
――現代美術であるのに書をモチーフに使っているユニークな作品ですね。どの作品にも細かな文字が毛筆でびっしり書かれているのに驚きました。
小学校1年の時から書道を習っていて、大学でも書道を専攻していてずっと書ばかりやってきました。自分がやっていた書をこれまでとは違った表現でやってみたかったのですが、結果としてアートに発展していったんです。
文字をびっしり書き込んだ作風を思いついたきっかけですが、昔の中国の科挙試験で使われたとされるカンニング下着というのを見た時でした。受験生が試験の「四書五経」などを覚えるのが大変なので、約70万字ものびっしりと漢字を書き込んだ下着を着てカンニングしたそうなんですね(笑)。それを京都で見た時、自分の作風に入れられないかと思いました。
それまでは書を抽象的に表現するのがアートだと考えていたのですが、このびっしりと書かれた膨大な漢字を見て凄く感動したんですね。文字のもつ構成やバランス、空間も大切ですが、必要に迫られ時に生み出された密集した漢字のもつパワーに圧倒的され、これを自分の作品に取り入れようと思ったんです。
――縫い合わされた麻布(あさぬの)に書かれた文字は日本の昔話の登場人物を題材にしていて、その物語を抽象化した作品のフォルムにはユーモアさえ感じます。
日本の昔話を題材にしたきっかけは、偶然、古書店で見つけた柳田国男さんの古い文庫なんです。読んだらすごく面白くて、その時から素材を昔話に限定してきています。中国語だと意味が分からないですが、日本の昔話は身近に感じて内容にも引きつけられます。