アーティストインタビュー
「言語化できない物語を
さまざまなカタチで紡いでいきたい」
美術家 ミヤケマイさん
アート、デザイン、プロダクト、工芸などカテゴリーにとらわれることなく多彩な作品を発表し続けてきたミヤケマイさん。10月にオープンしたばかりの「AQUA×IGNIS(アクアイグニス)」に過去最大のコントラクデッドな作品を納めたばかりでなく、温泉棟と宿泊棟のアートディレクションを担当。またアルフレックスのチェア「RINN」とコラボレーションした作品を発表するなど、本業以外の活躍でもSUMAUで注目したプロジェクトにも深く関わっている。ロンドンでの個展を終え、帰国したばかりのミヤケマイさんにお話をうかがった。
人の立ち位置や居場所を考えて
「椅子」が持つ意味を考えて表現したチェア「RINN」
――アルフレックスのチェア「RINN」とコラボレーションした作品を発表されました。「椅子」というプロダクトは、ミヤケさんにどのようなインスピレーションを与えたのでしょうか。
アルフレックスさんの企画に参加することになったとき、いちばんはじめに考えたのは、「椅子とはどんな物なのか?」ということです。私の感覚のなかでは日常的に目にする家具のなかで、いちばん人間に似ているのがチェアだと思いました。
「椅子」はただ座るためだけのものではなく、人の居場所やポジションを示すものでもあります。食卓では、お父さんの席、お母さんの席、私の席や兄弟姉妹の席、猫の席まで決まっています。社会にも、会長の席や社長の席、エースの席、窓際の席などいろいろあるようで。
椅子は、そこに誰も座っていなくても、脱ぎ捨てられた服や片付けられていない無人の家と同じように、そこにあるべき人の、人となりやその人の空気を雄弁に語る装置になりうる。こどものとき、誰もいない教室で好きな人の席にそっと座ってみる、というのも、椅子だからこそ成立することなのではないかと思います。
「隣の席はいつも青い」――そんなメッセージをこめた「椅子」に仕上げました。
アルフレックスのチェア「RINN」のシートカバーをデザイン。作品のタイトルは「隣の席はいつも青い」。ぬくもり感のある木のフレームには、精緻にかたどられたカブトムシやアリがはりついている。自然の中にある椅子を木に見立て昆虫が這い登ってくるイメージを、鋳物で表現したという。
カテゴリーにとらわれずに自由に作品を
発表し続けているミヤケマイさん
(恵比寿のアルフレックス本店で)。