アーティストインタビュー

2014.06.30
光学フィルムを使った住宅のプロジェクトもスタート。壁で部屋を区切るのではなく、光学フィルムを使いながら、空間と空間をゆるやかにつないでいく。

光学フィルムを使った住宅のプロジェクトもスタート。壁で部屋を区切るのではなく、光学フィルムを使いながら、空間と空間をゆるやかにつないでいく。

 

 

開放感とプライバシーを守るという二つの課題を

光学フィルムで同時にクリアすることができる

 

 

――建物自体にも光学フィルムを使うことも考えていらっしゃるんでしょうか。

 

大阪で、光学フィルムを使った住宅のプロジェクトがスタートしています。「ほかにはない、個性的な家に住みたい」というオーナーさんの希望で、壁で部屋を区切るのではなく、光学フィルムを使いながら、空間と空間をゆるやかにつないでいくような住居を設計しているところです。

 

光学フィルムを使うことによって、角度や立ち居地によって見え方が変わります。たとえば、ある空間をはさんだ両側の部屋の窓ガラスに光学フィルムを貼ると、それぞれの部屋からはあいだの空間が見えるのに、お互いの部屋のなかは見えません。

 

この原理を使って、お互いのプライバシーを守りながら眺めのいい中庭を共有する、そんな住まいをつくることも可能です。

 

昔は、他人との距離を上手に保って生活ができていたのではないかと思います。物理的に見えていても、見てはいけないものは見ない。そういうフィルターを各個人がかけられていたような気がするんです。

 

最近の人は、そういう距離感が上手につかめなくなってきているので、構造物でちゃんと区切らなければならなくなっています。

 

一方で、明るくて開放的な空間で暮らしたいというニーズもあります。光学フィルムを活用すれば、開放感とプライバシーを守るという二律背反的なふたつの命題を同時にクリアすることができる。

 

さらに、格子状の窓に光学フィルムを貼ったパネルをはめ、重ねる組み合わせを変えれば、アートのような感覚で楽しみながら空間を彩ることもできます。

 

光学フィルムを使った空間演出には、まだまだ大きな可能性があると感じています。

 

光学フィルムを使うことによって、角度や立ち居地によって見え方が変わる。この原理を建築に使うと、それぞれの部屋からは中庭が見えるのに、お互いの部屋のなかは見えなくなる特性を活かせる。

光学フィルムを使うことによって、角度や立ち居地によって見え方が変わる。この原理を建築に使うと、それぞれの部屋からは中庭が見えるのに、お互いの部屋のなかは見えなくなる特性を活かせる。

 

 

東京藝術大学大学院での修了制作の作品。「人と空間」をテーマにすると決め、この頃から空間の間仕切りに光学フィルムを使うことを思いついた。人のいる位置によって、また、人の見る向きによって空間を変えることを考える。

東京藝術大学大学院での修了制作の作品。「人と空間」をテーマにすると決め、この頃から空間の間仕切りに光学フィルムを使うことを思いついた。人のいる位置によって、また、人の見る向きによって空間を変えることを考える。

 

 

「光学フィルムの特性を活かしてさまざまな表現を模索しています」

「光学フィルムの特性を活かしてさまざまな表現を模索しています」