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2017.10.18

完成度なら8か8 Plus、未来先取りならX
後悔しない「究極のiPhone」選び

気になるスマートフォンといえば、やはりIT業界のトップ、時価総額世界No.1企業・アップルが発売している「iPhone」。2017年の秋は待望の最新モデルが登場。9月22日から「iPhone 8」と「iPhone 8 Plus」。11月3日からは「iPhone X(テン)」が発売される。中身がまったく新しい新型機種が同時に登場したので、どちらにしようか、迷っている人は多いはず。3モデルの違いは何か。そして、あなたにはどれが良いのか。ずばりアドバイスをお届けしよう。

 

3モデルともiPhone史上

「究極の完成度」を実現

 

IT業界の伝説的経営者、アップルCEOだったスティーブ・ジョブズ(1955〜2011)が2007年1月に発表、6月末から発売した、世界を変えたスマートフォン「iPhone」。日本で発売が始まったのは、翌2008年7月のこと。「iPhone 3G」というモデルだった。あれから10年が経ってこの秋、待望の最新モデルが登場した。9月12日にアメリカで(日本は9月13日早朝)にアップルのスペシャルイベントで発表され、9月22日からすでに発売されている「iPhone 8」と「iPhone 8 Plus」、そして11月3日発売予定の「iPhone X(テン)」だ。

 

左から、9月22日から発売されているiPhone 8 Plus とiPhone 8。そして11月3日発売予定のiPhone X。価格はiPhone 8は7万8800円〜、iPhone 8 Plusは同8万9800円〜。iPhone Xが11万2800円〜。(すべて税別・アップルストア価格)。問い合わせ先/アップルTEL.0120-993-993 www.apple.com/jp/iphone/

 

六本木ヒルズにあるアップル日本支社や店頭でiPhone 8とiPhone 8 Plusの実機を自分の手で操作してみて(残念ながら取材時点でiPhone X は未発売でデモ機もなし)自信を持って言えるのは、スマートフォンとしての完成度でも使いやすさでも、最新のAndroidスマートフォンと比較しても、やはりiPhoneは一歩先を行っているということ。フィーチャーフォン(通称:ガラケー)の開発・発売が終了し、スマートフォン以外の選択肢がなくなってしまった今、初めてスマートフォンを使うという人がこれから増えてくる。そんな人にはやはりiPhoneをオススメしたい。

 

ただ今回は、どのモデルを選ぶか、誰もが大いに迷ってしまうはず。なぜなら、3つのモデルはどれも「iPhone 7s / 7s Plus」の改良版ではなく外も中も完全に一新されていて、しかもどのモデルも完成度が抜群だからだ。実際、専門家たちの間でも意見は大きく分かれている。

 

Xと8の違いはホームボタンの有無と

ディスプレイ、そしてカメラ機能の違い

 

ホームボタンのないiPhone X。ボタンの代わりに操作は、ディスプレイの下側にタッチして行う。

 

メディアでいちばん注目されているのは、初代からディスプレイの下にあったホームボタンがなくなり、前面がほぼディスプレイの最上位機種・iPhone Xだ。何よりも画面のロック解除を顔認識(Face ID)で行うところが画期的だし、9を飛ばしてローマ数字を使ったX(テン)というネーミングも話題。

 

とはいえ、iPhone 8と8 Plusも基本性能は、実は大きな差はない。頭脳に当たるCPU(中央演算処理)チップは3つとも、アップルが独自に設計した「A11 Bionic」を採用し、ケースの表と裏にはガラス素材を採用。そして耐水、防沫、防塵性能を備えている。

 

またiPhone史上で初めて、ケーブルを繋がなくても「置くだけで充電できる」ワイヤレス充電に対応している。さらに動画撮影機能も、3つのモデルすべてが4Kビデオ撮影に対応しているのも新しいiPhoneの特長だ。しかもハイアマチュア向けのビデオカメラやデジタル一眼でもようやく対応製品が出てきたところ。それなのにこれだけでプロ向けの高画質4K/60pでの撮影ができる。あまり注目されてはいないが、これも画期的なことだ。

 

防水防滴防塵性能はiPhone 7と同じ。新しいのは本体の裏側もガラスになり、ワイヤレス充電に初めて対応したこと。

 

 

では、3つのモデルの大きな違いは何だろうか。ディスプレイの種類とサイズと解像度、本体ロックの解除方式、そしてカメラ機能だ。

 

ディスプレイは、iPhone 8/8 PlusがこれまでのiPhoneと基本的には同じ「Retina HD」と呼ばれるIPS型のTFT液晶で、iPhone Xが「Super Retina HD」と呼ばれる、鮮やかな発色と高解像度のOLED(有機EL)ディスプレイ。ディスプレイのサイズと解像度はiPhone Xが5.8インチ(2,436×1,125ピクセル)で解像度458ppi、iPhone 8 Plusが5.5インチ(1,920 x×1,080ピクセル)で解像度401ppi、iPhone 8が4.7インチ(1,334 ×750ピクセル)で解像度326ppi。

 

本体の大きさは、iPhone 8 Plusがいちばん大きく(幅78.1×高さ158.3×厚さ7.5mm)、次にiPhone X(幅70.9×高さ143.6×厚さ7.7mm)、そしていちばん小さいのがiPhone 8(幅67.3×高さ138.5×厚さ7.3mm)。つまり、iPhone Xはホームボタンをなくしたおかげで、本体の大きさはiPhone 8 Plusより小さいのにディスプレイは大きい。またこれまでのiPhoneより縦長だ。

 

そしてわかりにくいけれど、ディスプレイの違いと共に注目したいのが、カメラ機能の違いだ。カメラの解像度は前モデルで継続して発売されるiPhone 7と同じだが、3つのモデルとも画像を捉えるセンサーが新しくなっている。詳しくはこの後で説明するけれど、カメラの性能が優れている順に並べると、iPhone X、iPhone 8 Plus、iPhone 8の順になる。まずは「基本は同じで、ディスプレイとカメラ機能が違う」ことを理解しておこう。

 

普通に使う人やスマホ初心者には

ベーシックな「8」がオススメ

 

内蔵のCPUはどのモデルも新開発の「A11 Bionic」。iPhone 7シリーズに使われていた「A10 Fusion」より最大70%も高速で、より美しく滑らかな動画表示やAR機能が可能になった。

 

今回の新型iPhone選び、機能が優れている順でオススメするなら、当然のことだが価格の順、つまりiPhone X、iPhone 8sとiPhone 8の順になる。でも、ふだんは基本機能しかまず使わない、つまり「普通に電話をし、普通のアプリを使い、普通に写真を撮る」人にとっては3つのモデルの「機能の差」はほとんど感じられないはず。そんな人には、5.5インチの大型ディスプレイを持つiPhone 8 Plusは、本体サイズがiPhone 8よりも高さでちょうど2cm、幅で約1cmも大きい分、持ち運びにくいし使いにくいだろう。iPhone Xは8 Plusよりひと回り小さいが、それでもiPhone 8よりはかなり大きい。

 

そして、スマートフォンは初めてという人にも、やはりいちばんのオススメモデルは本体サイズがいちばん小さいiPhone 8だ。ガラケーからスマートフォンに換えたとき、いちばん気になるのは、本体が格段に大きいこと。4.7インチのディスプレイサイズは標準的でガラケーよりはずっと大きく、不満を感じることはないはず。

 

カメラ機能にこだわるなら

デュアルカメラの「X」か「8 Plus」

 

左から、iPhone 8 Plusのデュアルカメラ、iPhone Xのデュアルカメラ。

 

ではiPhone XとiPhone 8 Plusはどんな人にオススメなのか。それはカメラ機能にこだわる人、より美しい写真や動画を撮影したい人だ。カメラの画素数こそ12メガピクセルとiPhone 7と同じもののiPhone 8も含めて写真や動画を撮影するときのフィルムに当たるセンサーが新しいものになり、どのモデルも画質が向上している。実際のiPhone 8でも、写真の画面をスワイプして拡大してみたときのディテールの描写力には驚かされた。

 

iPhone8 Plusの写真。右はその敷物の部分を拡大したところ。ディテールまで緻密な描写力は最新のデジカメにも負けない。

 

そのうえ、iPhone XとiPhone 8 Plusのカメラは「iPhone 7 Plus」と同じデュアルレンズ仕様、つまり広角標準と望遠、2つのレンズを内蔵しているタイプだ。このため、人物撮影やモノのクローズアップを撮影するとき、2つのレンズを使って被写体との距離を撮影、測定して被写界深度を狭め、ボケ量を自動的に決定、人物写真撮影時に背景をぼかしたりできるポートレートモードが使える。

 

さらにiPhone 8 PlusとiPhone Xではまだベータ版だが、このポートレートモードをさらに進化させた画像処理機能「ポートレートライティング」という機能が新しく追加された。これは人物の顔を認識して被写体のライティングが変えられる、しかも撮影後にも自由自在に変えられるという画期的な機能。具体的には、ボートレートモードで撮影した人物の画像を、背景を暗く落とし暗闇から人物だけが浮かび上がるようにしたり、後ろから柔らかく光が当たって人物が浮かび上がるようにするラインライト(輪郭光)照明にしたりなどが自在にできるのだ。

 

この機能は感動的で、筆者も思わず目を見張った。写真好きで画像ソフトを使って写真を加工している人ならこの価値、凄さは分かって頂けるだろう。プロのようなポートレートライティングがこの1台でその場で簡単にできるのである。まだベータ版だが、iPhone 7 Plusのポートレートモードがベータ版から正式版に進化したように、ポートレートライティングも今後は正式版に進化するはずだ。

 

ポートレートライティング機能を使ってみたところ。同じ人物写真のライティングをこのように変えることが簡単にできるのは驚き。

 

先進機能と大画面、パワーに

こだわる人は迷わずiPhone X

 

ただ、同じデュアルレンズ仕様でも、iPhone Xのカメラ機能はiPhone 8 Plusより手ぶれ補正機能がさらに優れたものになっている。iPhone 8 Plusでは広角標準レンズだけに光学式手ぶれ補正機能が付いているが、iPhone Xでは望遠レンズにも光学式手ぶれ補正機能が搭載されている。

 

具体的にどのくらい差があるのかはiPhone Xと実機で比較できる11月3日以降を待たなければならないが、写真に徹底的にこだわるなら、価格は高いがiPhone Xを選ぶ方が良いだろう。また、ポートレートモードやポートレートライティングは、iPhone 8 Plusでは本体背面のカメラでしか使えないが、iPhone Xでは顔認証機能に使われている「TrueDepth」と呼ばれる、顔を立体的に捉える機能を持ったフロントカメラを活用してセルフィー(自撮り)でもこの機能が使える。だからセルフィー好きの人、たとえばInstagramerにも、iPhone 8 PlusよりiPhone Xがオススメだ。

 

またゲームが大好きな人のように、「画面サイズはできるだけキレイで大きい方がいい」という人も、iPhone Xが文句なくベストな選択になる。何しろiPhone Xは本体サイズがiPhone 8 Plusより高さで約1.5cm、幅で0.7mmほど小さいのに、画面サイズは5.8インチとPlusより大きいのだ。しかも解像度が高いし、有機EL液晶ディスプレイなのでコントラスト比もiPhone 8の1400対1、iPhone 8 Plusの1300対1に対して100万対1と圧倒的にくっきり&ハッキリしている。

 

そしてもちろん「いつでも最先端&最強スペックのモノが欲しい」という人にはiPhone Xは最良の選択だ。フロントカメラに顔を向けただけでアッという間に画面ロックを解除したりできるのは便利だし、今後は顔認証機能を使った新しいアプリも続々と登場して新しい体験ができるはず。

 

新機能よりも「究極の完成度」を求めるならiPhone 8とiPhone 8 Plus。スマートフォンの未来をいち早く体験したいならiPhone X。これが結論だ。

 

3モデルとも写真機能は多彩で、多重露光のようなこんな写真も撮れる。またリアルな映像とヴァーチャルな映像を合成するAR(拡張現実機能)も楽しめる。

 

(取材・文=渋谷ヤスヒト)

 

PROFILE 渋谷ヤスヒト

ジャーナリスト、エディター、メディアプロデューサー。モノ情報誌編集部員時代の1995年から現在まで、スイス2大時計フェアや国内外のあらゆる時計ブランドの取材を一貫して続ける腕時計のエキスパート。他にもクルマ、カメラ、家電、IT機器、ファッション、トラベル、食まで、国内外のあらゆるモノとコト作りの現場取材を続けている。