老舗の手みやげ
缶に日本の春を詰め込んで
銀座菊廼舎「冨貴寄 桜色缶」
華やかさと江戸和菓子らしい
味わいを追求
小さくてカラフルな干菓子がたっぷりと詰まった「冨貴寄(ふきよせ)」。缶を開けた瞬間に、繊細で華やかな世界が広がる。
銀座菊廼舎(ぎんさきくのや)の2代目が、古くから茶事には欠かせないお菓子であった吹きよせをアレンジし大正後期に考案した。それ以来、お茶の席はもちろんのこと、現代ではかわいらしい見た目がSNSでも話題になるなど時代を超えて愛され続けるロングセラー商品だ。「富を集める」という意味を持つ「冨貴寄」のネーミングから、お祝い事にも重宝されている。ハートや扇形の雲平に好きなメッセージを印刷して缶に収めるサービスもあり、結婚式の引き出物などに人気を博している。(※1か月前までに要予約)
和風クッキーや金平糖、和三盆糖、落花生など30種類以上の干菓子は、昔ながらの手仕事を大切に、お菓子のひとつひとつを手で詰め合わせる。また、和菓子であることにも重きを置いて、クッキーにはバターを使用せず、シンプルさを追求している。季節に合わせて、夏には貝殻、秋は紅葉とモチーフや色合いを変えているのも和菓子ならではの心意気だ。
想いは変わらぬまま
革新を繰り返し続ける
銀座菊廼舎の創業は明治23(1890)年。菓子店を始める前は、着物の洗濯をする店だったという。洗濯物の干し場に、菊を植えていたところ、菊が咲くころにその花を眺めに近所の人が集まった。その人々に初代がお茶やお菓子をふるまったところ、評判に。人が喜ぶ様子を見た初代の井田銀次郎は和菓子屋を始めたという。
創業当時は歌舞伎座の近くに店を構えていたため、歌舞伎せんべいを売りだしたところ、これがヒットし銀座のお土産の定番品になった。大正後期に入り、二代目が茶時の干菓子を糸口に「冨貴寄」を考案。戦禍をしのぎ、三代目は銀座五丁目あづま通りに本店と工場を構えていたが、昭和46年に周囲の店舗と協働してギンザコアを建設。以降はギンザコアの地下一階で本店を営業している。2011年には店内にイートインコーナーを設置し、買い物客の憩いの場として親しまれている。
現在、店を守っているのは五代目の井田裕二氏。100年以上も商いを続けられているのは「伝統に甘んじ、革新を恐れることは決して許されない」との考えからだといい、素材から製造、販売し商品が食されるまで、それぞれの工程に現代の感覚を持って改善点を探し続けている。
例えば、味の好みや感覚は時代とともに移り変わるものと、ココナッツなど通常和菓子では使用されることの少ない素材も取り入れる。店舗限定商品である「揚げまんじゅう」には、マカダミアナッツをふんだんにまぶし、その香ばしさはほかにはないと東京土産としても人気だ。看板商品の「冨貴寄」でさえも、食べたときの懐かしさはそのままに、時代を意識したデザインを取り入れ進化を続けている。
創業より変わらないのは「心やすらぐ おいしいものを」 という理念。変化と進化を繰り返しながら、この想いは変わることなく次の100年に向けて銀座菊廼舎は歩み続ける。
銀座菊廼舎
住所:中央区銀座5-8-8 銀座コアビルB1
TEL:03-3571-4095
営業時間:11:00〜20:00
定休日:なし
https://www.ginza-kikunoya.co.jp/