映画ソムリエ東 紗友美の「映画と暮らす」

2018.07.09

変化を受け入れることで
新たな扉が開く
「ホリデイ」

Film (C) 2006 columbia Pictures Industries, Inc. and GH One LLc. All Rights Reserved.

今回より映画ソムリエ東 紗友美による映画解説とともに、

その映画に登場する家についてもご紹介する「映画と暮らす」の連載がスタート。

第1回目は、2人の主人公の暮らす家も大きな魅力である「ホリデイ(2006)」を取り上げます。

 

ヤドカリは、環境や自分の成長に合わせて家を何度も変えていく。

映画「ホリデイ」は、時にはそんなヤドカリのように、今いる場所に固執せず、変化を受け入れる姿勢を持つことで新しい扉が開くことを伝えてくれる物語です。

 

「波を待つよりも、波を起こせ」とはよく言ったもので人生にサプライズが起きることを待っていても、実際には日常はそう簡単には変わらない。

今の生活に納得できないのであれば、時にはサプライズを自ら起こす勇気を持たなくてはなりません。

 

 

『ホリデイ』
Blu-ray:1,886円+税/DVD:1,429円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2018年7月現在の情報です

 

 

文豪シェイクスピアの格言『愛に出会えば旅は終わる』という言葉から始まるこの物語は、誰もが憧れる仕事をこなすものの、愛だけはなかなか見つけられない2人の女性をダブル主人公に迎え進みます。

1人はロサンゼルスで映画の予告編製作会社を経営するアマンダ(キャメロン・ディアス)。そしてもう1人はロンドンの新聞社に勤めるアイリス(ケイト・ウィンスレット)。

アマンダは恋人に浮気され、アイリスは想いを寄せる男性が自分以外の女性と婚約発表をする現場に立ち会ってしまう…。

そんな失意のどん底に落ちた2人が、偶然にもインターネットの「ホーム・エクスチェンジ」で出会い、お互いの家を交換して、普段とは全く違う環境で2週間のクリスマス休暇を過ごすことに…。

すると、その街で暮らす人々との新たな出会いとともに思いがけないラブ・ストーリーも始まることになるになるのです。

 

ただの恋愛映画に終わらず、それ以上にポジティブなメッセージを受け取ることができる親友からの手紙のような映画です。

 

まず、なんといっても2人の交換した家それぞれがもう魅力的! 対象的な2軒の家は、もはや登場人物の1人であるかように存在感を放ちます。

 

アメリカとイギリスのそれぞれの家のハイライトが楽しめる前半は、おしゃれな家を見るのが好きな人にとって極上のシーンとなっています。

ゴージャスな雰囲気を楽しみたい人はLAパートのプールやシアタールーム付きのアマンダの大豪邸を。

 

暖炉の火が優しくこぢんまりとしたあたたかいテイストを真似したい人はイギリスパートのアイリスの石造りの自宅ローズヒルコテージを。

幾度となく「映画の中の素敵な家」として紹介され、真似したい家と呼ばれる部屋のインテリアを参考にするのも楽しい見方と言えますよ。

 

 

 

 

プールやシアタールーム付きのアマンダの邸宅

 

 

2カ国を舞台にほぼハーフハーフで物語が繰り広げられ、アメリカ英語もイギリス英語も登場するので英語を学習している方にもおすすめできます。

 

 

Film (C) 2006 columbia Pictures Industries, Inc. and GH One LLc. All Rights Reserved.

 

 

そして、この映画に描かれた最も大事なメッセージは非常にシンプルなもの。

それは、どんな自分も受け入れるということ。

 

私達の日常はメイクにハイヒール、日々戦闘服をまとうかのように女を生きています。普段見ないようにしていても、心にはいくつもの小さなガラスの破片が刺さっていて、時々それがものすごく痛む瞬間もありますよね。

だけど、そんな惨めな自分を正面から受け入れられず、時には見過ごして生活していないでしょうか?

 

まず、知的で聡明で誰にでも優しいアイリス。

新聞社に勤め文才を発揮する知的さを持っているにもかかわらず、浮気心の際立つ下劣な男性を忘れることができない。

自分以外の女性と結婚しておきながらその後も自分と関係を持とうとしてくるその男の言葉にいつも振り回されてしまう。どれだけひどいことをされても、少しでも優しいことを言われると彼が自分のことを愛してくれていると信じてしまい、また傷つくことの繰り返し。

 

そして、明るくパワフルな美人社長のアマンダ。

自分の稼ぎだけでかなりの贅沢ができる暮らしをしている“ザ・できる女”。働く女性すべての憧れのような存在にもかかわらず、実は内面に強い孤独感を抱えていて、自分を認めてほしいという気持ちと常に葛藤している様子。

 

一見順風満帆に見えるのに、なぜかうまくいかない2人に共通しているのは、根本的に自信が持てていないという点

自己肯定感を高めることができないと、自分を苦しめる価値観に囚われてしまいますし、1歩踏み出すことを諦めてしまい、人生を豊かにできないものです。

自信が持てないと幸せから遠ざかるという問題点を描きながら、それを解決する方法も彼女たちの行動を通して描いていてくれるところにこの映画のすばらしさを感じます。

 

さて、私達にもすぐにできる自己肯定感を高める方法。

それは、

時には思いっきりネガティブをぶちまけてしまうこと。

逃げるという選択肢を恐れず自分を守るために時には嫌な人とは、距離をとること。

自分ではなく誰かの幸せのために、いつも以上に動いてみること。

「私なんか…」と思いがちな日々が続いたら、些細なことですが試してみるのも良いかもしれません。

 

 

Film (C) 2006 columbia Pictures Industries, Inc. and GH One LLc. All Rights Reserved.

 

 

他にも、「思い立ったら吉日」の考え方の大切さだったり、「恋はいつでも、どこの場所でも、どんな状況でも生まれる!」というメッセージだったり。ハッピーに溢れた物語。

鑑賞するタイミングによってアイリスとアマンダ、2人の女性どちらに感情移入するかが微妙に変化して心を写す鏡のような役割を果たしてくれる、人生で何度でも付き合える映画です。

 

(映画ソムリエ 東紗友美)

 

 

映画ソムリエ 東 紗友美(ひがし・さゆみ)

1986年6月1日生まれ。2013年3月に4年間在籍した広告代理店を退職し、映画ソムリエとして活動。レギュラー番組にラジオ日本『モーニングクリップ』メインMC、映画専門チャンネル ザ・シネマ『プラチナシネマトーク』MC解説者など。

 

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