映画ソムリエ東 紗友美の「映画と暮らす」

2018.09.07

風変わりなあの娘に学ぶ
人生を楽しくさせる方法
「アメリ」

こんにちは、映画ソムリエの東紗友美です。

 

2001年に公開され、カルト的人気を博した空想好きな女性の恋を描いたロマンチックコメディ「アメリ」。

フランス映画のヒットが稀な日本でも興行収入16億円を突破した人気作なので、1度は鑑賞した事がある人もいるかもしれません。

 

だけど今こそもう1度この世界に浸って欲しい! それは、アメリは1回目より2回目のほうが物語の本質に触れることができる作品だからです。

アメリの個性的でちょっと不思議なキャラクター、Instagramのさきがけだったのではないかと今ならば思えてしまうほどフォトジェニックでアーティスティックな世界。

 

モンマルトルの街が、まるでおとぎの国なんじゃないかとフランスという国へ憧れを抱いた人も多いのではないでしょうか?

 

特に、物語を華やかに印象付けているのが、赤を基調としたインテリアに彩られたアメリの部屋。今でも、インテリア好きにとっては憧れの部屋のひとつとなっています。

 

 

 

 

――モンマルトルのカフェで働いているアメリ(オドレイ・トトゥ)は妄想をすることが大好き。あるとき部屋の洗面所で偶然見付けた知らない人の宝箱を発見し、その宝箱の持ち主を探しだそうと思いつく。

その出来事をきっかけにアメリはちょっとしたいたずらで他人を幸せにしようと日々、奮闘するようになるのだった。

 

 

なくした宝物を見つける手伝いをしたり、手紙を待っている人にこっそり手紙の代筆をしたり、恋のキューピッドになったり、意地悪をする人間に仕返しをしたり…。

そのすべてを、アメリ自身がモンマルトルを飛び回る無邪気な妖精のように、こっそりと誰にも知られずに内密にやりとげようとするんです。

何も見返りがあるわけではないのにひたすら人の幸せのために、あっちに行ったりこっちに行ったり。

一度見ただけではアメリのこの「他人を幸せにするいたずら」の意図が理解できず、「変わった女だな…」という印象だけで終わってしまいます。それが、この映画の好き嫌いが分かれる一因になっているとすら感じます。

 

私も最初は、アメリの行動が理解できませんでした。だって、仕事を終えて帰宅してもSNSが気になって、プライベートな時間よりも、どうしても緊張状態といえる時間を過ごしがちな私たち。オフモードになれていない状態でアメリを目の当たりにしてしまうと究極の不思議ちゃんの行動に見えませんか?

 

コミュニケーション能力も高いとはいえない女性がたった一人で誰に認められるわけでもなく、こっそり他人のために動く。

しかも、決してその喜びを誰かと共有するわけでもない。

「嗚呼、なんと閉鎖的な生き方。もったいない。」と、ココロの中で毒づく人すらいるかもしれません。

 

でも、度々アメリの選択を観ているうちに気づいてしまったんです。

とじこもった価値観を持っているのが、自分のほうだという事実に。

 

私は何か頼まれると、“お返ししてほしい”感が、とにかくひどい。

いつからこうなってしまったのか、もう思い出せないけれど…。

「お礼がもらえるかも。」「いつか困ったときに助けてもらえるかも。」「あの人はいつか偉くなりそうだから今、恩を売っておこう。」と。

普段、口に出さないけど、心の中は、まっ黒じゃないか。私の方こそ、固執した価値観の中にいるんだ、と。

 

アメリは、自分の人生を楽しむために忘れがちな「ヒント」をくれる。

それは、人を幸せにできる生き方でこそ自分も幸せになれるという事実です。

アメリのいたずらよりも高尚な行いになるかもしれないけれど、難病患者の死を看取ってきたマザー・テレサだって、難民を助けてきたアンジェリーナ・ジョリーだって、社会的活動が有名なシャロン・ストーンだって。生き方が魅力的な女性たちは、困っている人を助けることを超自然主義的に行い、さらに自らを成熟させています。

 

多くの働く人々は皆もともと、人を幸せにしたいという思いがあって、会社や職業を選んでいるはずです。就職サイトでも「人の役に立ちたい」等の仕事ジャンルを集めた特集は常に目につきます。

 

でも、いつの間にか日々のせわしなさや人間関係のゴタゴタのせいで、自分の幸せばかりを優先して利己的になってしまう瞬間も人生で少なくありません。

そんな時、アメリの世界観に癒やされ、ちょっとだけ彼女のエッセンスを取り入れてみてください。

モノクロのどこか物足りない日常をカラフルにするのは自分自身で、日々の彩りには、誰かの笑顔が必要だということを彼女は教えてくれるのです。

(映画ソムリエ 東紗友美)

 

 

 

映画ソムリエ 東 紗友美(ひがし・さゆみ)

1986年6月1日生まれ。2013年3月に4年間在籍した広告代理店を退職し、映画ソムリエとして活動。レギュラー番組にラジオ日本『モーニングクリップ』メインMC、映画専門チャンネル ザ・シネマ『プラチナシネマトーク』MC解説者など。

 

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