Complicated Watch

2018.02.07

あなたの腕の上に、宇宙に浮かぶ
「太陽系」の姿を美しく再現

©Van Cleef & Arpels SA – Johann Sauty

天文時計ほどロマンティックな機械はない。天空に浮かび、輝きながら規則正しく運動を続ける天体たち。時計師たちは昔から神秘的なその姿と動きをメカニズムで再現したいという情熱を抱き、さまざまな天文時計を生み出してきた。教会の大きな仕掛け時計から置き時計へ。さらに懐中時計から腕時計へ。そして21世紀、パリを代表するハイジュエラーにしてウォッチメイカーのヴァン クリーフ&アーペルの「ポエティック コンプリケーション」の1シリーズ「ポエティック アストロノミー」コレクションは、美しいデザインと美しいメカニズム、美しい装飾で天文時計に新境地を拓いた。その最新作をご紹介しよう。

 

 

Vol.8

VAN CLEEAF & ARPELS『Lady Arpels Planetarium』

 

ヴァン クリーフ&アーペル「ポエティック アストロノミー レディ アーペル プラネタリウム」

 

©Yasuhito Shibuya 2018.
作品プレゼンテーションでコンセプトとメカニズムについて説明する時計担当者。

 

 

私たちは“太陽系の時間”

を生きている

 

1秒。1分。1時間。1日。1ヵ月、そして1年。私たちが日々使うこうした時間の長さは現在、原子時計を規準に定義されている。だが、もともとはどのように決められたのか、あなたはご存じだろうか。

 

地球は太陽系の中心である太陽の周囲を、自ら回転(自転)しながら周回(公転)している。1年とは地球が太陽の周囲を1周する(公転)する時間であり、1日とは地球自体が1回転する時間のこと。そして、月は地球の周囲を29.5日間かけて1周する。

 

この地球上のあらゆる生き物は、太陽系のこの周期を規準に進化、発展を続けてきた。太陽と地球、そして月は、この世界の時間、リズム、秩序の源なのだ。

 

 

太陽から水星、金星

そして地球と月の動きを再現

 

2018年1月15日、スイス2大時計フェアのひとつ、スイス・ジュネーブの国際高級宝飾時計展(S.I.H.H.)で発表されたヴァン クリーフ&アーペルの新作レディスウォッチ「レディ アーペル プラネタリウム」は、地球上の生命の時間を司るこの「太陽系の時間」に焦点を当てたコンプリケーションウォッチだ。

 

©Yasuhito Shibuya 2018.
この作品が初めて公開されたS.I.H.H.2018のヴァン クリーフ&アーペルの展示ブース。世界中から時計バイヤーや時計ジャーナリストが集まった。

 

太陽系の中でも、太陽と地球と月、太陽と地球の間にある2つの惑星、水星と金星の動きと輝きにフォーカスし、ジュエリーとウォッチメイキングの伝統的な素材、天文表示機構のスペシャリストとして名高いオランダの独立時計師クリスティアン・ファン・デル・クラウーと協同で開発した特別な天文表示用のモジュールで、その動きを直径38mmケースの中の文字盤上に正確に再現している。

 

“太陽系の時間”にスポットを当てた腕時計作りは、ヴァン クリーフ&アーペルにとって、実はこのモデルが初めてではない。2014年に発表され、パーマネントコレクションとして現在も発売中の「ミッドナイト プラネタリウム ウォッチ」は、水星、金星、地球、火星、木星、土星と6つの惑星の動きを直径44㎜ケースの中の文字盤上に再現したもの。壮大なコンセプトと美しさで世界中の時計愛好家や天文ファンが絶賛する天文腕時計の傑作だ。

 

©Van Cleef & Arpels SA
 
ミッドナイト プラネタリウム ウォッチ 2014年に発表されたメンズ・プラネタリウムウォッチ。太陽系の6つの惑星が文字盤上を本物そのままの周期で周回する。文字盤を1周するのにかかる時間は、最外周にある土星が29年以上、木星が約12年、火星が687日、地球が365日、金星が224日、 水星が88日。自動巻き/ピンクゴールドケース/ケース径44mm/アリゲーターストラップ/3気圧防水/価24,600,000円(税抜)/ 26,568,000円(税込)/発売中。

 

 

 

女性と縁の深い衛星

月をダイヤモンドで

 

©Yasuhito Shibuya 2018

 

この傑作のコンセプトを引き継ぎ、女性のための“太陽系の時間”を表示する天文腕時計の開発に当たって、ヴァン クリーフ&アーペルはその機能に思い切った変更を加えた。動きを再現する惑星を6つから3つ、水星、金星、地球へと半減させる一方で、ターコイズで表現される地球にその衛星、つまりダイヤモンドの月を新たに加えたのである。

 

©Van Cleef & Arpels SA – Johann Sauty
 
ホワイトゴールドの台に月のモチーフとなるダイヤモンドをセットする。この「月」が、ターコイズ製の地球の周りを本物の月そのままに周回する。

 

 

なぜなら、月はどの文明においても神秘的な存在。世界各地の神話上でも、月と女性は深い関わりを持ち、女性の象徴とされてきた。女性の腕を飾る天文腕時計には決して欠かせない存在だからだ。

 

では、その中に盛り込まれたメゾンの卓越した装飾の技と機能をご紹介しよう。中央で燦然と輝く太陽はピンクゴールド、そして宇宙空間は同心円状に配置された、サイズの違う7枚のアヴェンチュリン・ディスクで表現されている。そして、それぞれのディスクの上には、ピンクのマザーオブパールでできた水星、グリーンエナメルを施したビーズの金星、ダイヤモンドの月を従えたターコイズの地球がセットされ、4つの天体はそれぞれ公転・自転する周期そのままで太陽、そして地球の周囲を正確に回転する。

 

©Van Cleef & Arpels SA – Johann Sauty

 

それぞれの天体が文字盤を一周するのにかかる時間は、水星が 88日、金星が224日、地球は当然のことながら365日。そして月は、地球の周りを29.5日かけて一周し、毎日、天空のドラマを文字盤上で再現してくれる。

 

そして現在の時刻を表示するのは、文字盤の最外周を12時間かけて1周するゴールド製のほうき星。このほうき星が1本の針の役割をして時分を表示する。つまり、秒単位、分単位の時間を細かく表示することはない。そこには宇宙の壮大なスケールで時間を捉えてほしい、という作り手の意図が込められている。

 

 

ある日の地球と月と2つの星

プラネタリウム機能でその姿も再現

 

しかもこの腕時計の機能は、ただ「今の地球と月、水星と金星の軌道上の位置」を表示するだけではない。ケースを裏返すと、ターコイズとオニキス、さらに三日月型にダイヤモンドがスノーセッティングされたホワイトゴールド製の自動巻きローターに加えて、「日」「月と年」を表示する2つの窓がある。リュウズを操作してこの年、月、日をセットすることで、過去でも未来でもその日の4つの星の太陽系での姿が出現する。つまり、この腕時計は、機械仕掛けのアナログなプラネタリウムでもある。

 

©Van Cleef & Arpels SA – Johann Sauty
 
外周部の2つの窓の年、月、日はリュウズだけで確実に操作できる。

 

 

この機能を使えば、過去や未来の特別な日の水星、金星、地球と月の姿を文字盤上で眺めることができる。これは、この時計のオーナーだけに許されたロマンティックで特別な楽しみ。

 

女性のために作られたこの美しい天文腕時計を身に着けて、あなたの時間を、星々の煌めきに彩られた素敵な時間に変えてみてはいかが?

 

 

 

 

 

©Van Cleef & Arpels SA – Johann Sauty

 

 

VAN CLEEAF & ARPELS『Lady Arpels Planetarium』

ヴァン クリーフ&アーペル「レディ アーペル プラネタリウム ポエティック コンプリケーション ウォッチ」

 

2014年に発表された「ミッドナイト プラネタリウム ウォッチ」から4年。女性のために開発された、太陽系の惑星の構造を文字盤上に美しく再現した“プラネタリウムウォッチ”の最新作。自動巻き/ダイヤモンドをセットしたホワイトゴールドケース/ケース径38mm/ダイヤモンドをセットしたホワイトゴールド製ブレスレット/日常生活防水/総ダイヤモンド数594個(総カラット数約12.8カラット)/価格36,800,000円(税抜予価)/39,744,000円(税込予価) /ブルーアリゲーターストラップ仕様(総ダイヤモンド数379個、総カラット数約4カラット)は27,300,000円(税抜予価)/29,484,000円(税込予価)/2018年4月発売予定

 

問い合わせ先

ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク 0120-10-1906

11時〜19時(月〜金 祝祭日除く)

http://www.vancleefarpels.com/

 

(取材&文&写真・渋谷ヤスヒト)

 

 

PROFILE 渋谷ヤスヒト

ジャーナリスト、エディター、メディアプロデューサー。モノ情報誌編集部員時代の1995年から現在まで、スイス2大時計フェアや国内外のあらゆる時計ブランドの取材を一貫して続ける腕時計のエキスパート。他にもクルマ、カメラ、家電、IT機器、ファッション、トラベル、食まで、国内外のあらゆるモノとコト作りの現場取材を続けている。