働き人のひみつ道具
「世の中にプラスのインパクトを与えたい」
メルカリリーガルグループマネージャー
岡本杏莉さん
メルカリを法的側面から支えるリーガルグループでマネージャーを務める岡本杏莉さん。コツコツとした地道な作業が実を結ぶことも多いこの仕事。持ち物も決して華やかではないが、そこから仕事に真摯に取り組む岡本さんの姿がうかがえた。
留学をきっかけに
スタートアップへの道へ
大学在籍中に旧司法試験に合格し、卒業後は西村あさひ法律事務所でM&Aの担当としてキャリアを積んでいた。事務所に在籍中、社内の留学制度を利用し、アメリカのロースクールに通ったことが、大きな転機となる。
「シリコンバレーの中心のような場所で、スタートアップで活躍されている企業家に出会ったり、セミナーに参加したりするうちに、スタートアップに興味を持つようになりました。やりたいことを成し遂げるために取り組む姿勢に衝撃を受けたんです」
そこで出会ったのがメルカリだった。日本の企業でありながら世界を目指しているところに魅力を感じた。またサービス自体にも可能性を見出した。
「これまでは、中古品を納得できる金額で簡単に売れる場所はありませんでした。いまは多くの方が物を捨てる前に、“メルカリで売ろう”という発想になるのではないでしょうか。そんなふうにモノが循環していく仕組みが面白いって思ったんです。人の生活や考え方を変えるサービスだなって」
2015年3月にメルカリに入社し、法務として業務を行っていたが、徐々に業務の幅が広がっていく。
「今でこそ社員は1,000人以上ですが、私が入社したときの社員番号は79番。法務も2人だけでファイナンスチームも無い状態でした。そんな状況だったので、席が近かったCFOから『調達に興味ある?』と軽く聞かれて、自然な流れで資金調達も行うようになりました」
これまで携わったことのない業務でも、「やりたいことにチャレンジできるのがスタートアップのよさ」だという。
さまざまな案件に関わってきたが、特に印象的なのは 2018年6月の上場の際、プロジェクト全体を統括する立場になったこと。
「IPO(株式公開)に関わるのは初めての経験。右も左もわからない状況でどうなるんだろうと不安もいっぱいでした」
社内だけでも40~50人が関わる大きなプロジェクト。社員への仕事の割り振りや、社外のスタッフとのやりとり、審査のための資料の作成など業務は膨大でも「やりがいを感じられた」と前向きに話す。
非上場の頃から企業としてコツコツとIR活動を行ってきたことも功を奏し、メルカリのことを理解してくれている投資家も多くいた。
「周囲の人に助けていただき、結果的には規模の大きなIPOになりました。国内だけではなくアジア各国からの注目度がかなり高くて。日本のスタートアップでこれだけできるんだって感動しました!」
上場した今も課題はたくさんある。「今までは成長している事業についていくのが精一杯だったけど、今後は余裕がなくてできなかったことを攻めの体制でやっていきたいですね」
多忙に見える岡本さんだが、法律事務所ZeLoと株式会社LegalForceにも所属。土日など空いた時間には、LegalForceでAIを使った法務の支援システムのスタートアップの手伝いをしている。そういった岡本さんのバイタリティはどこからくるのか。
「世の中にプラスになるインパクトを与えたい、という気持ちです。それは、小さなことから始まることもあるので、チームのなかで何ができるか、会社に対して何ができるか、常に考えています。それで周囲に変化が起きたら、結果的に自分が楽しいって思えるんです」
仕事への実直さが伝わる
アイテムたち
「持ち物に女性らしさがなくて恥ずかしい」というが、法律家らしいアイテムや、スタートアップならではの企業ロゴ入りグッズなど、常に仕事に前向きな岡本さんらしさを感じられるものばかり。
判例六法
「学生時代は勉強のためにずっと六法とにらめっこしていました。今はそこまでではないですが、やはり、法律に関わる仕事内容なので、いつでも手に取れる場所に置いて、条文を確認する際に使っています」
バッグ/PRADA
「外出の際は、契約書など、書類の束を持ち歩くことが多いんです。どうしても荷物が重くなってしまうので、バッグは軽いのが必須で。このバッグは大き目で、軽くてしっかりしているところが気に入っています」
メルカリロゴ入りバッグ
「サブバッグとして愛用しています。パソコンを入れるときに使うことが多いですね。ロゴが赤いバージョンもあるのですが、これはIPOのイベントの際に、お土産として作ったものなんです」
メルカリ×ロルバーンメモ帳
「ロルバーンとのメルカリのコラボのメモ帳は、社員に配られたものです。こういったアイテムがあるのもスタートアップらしいですよね。IT系の会社ではあるのですが、契約書や書類含めて私は紙で見たほうが安心できるので、メモも紙に残しています」
ふせん
「書類を扱うことが多い仕事なので、ふせんは毎日何枚も使います。チェックで貼ったり、メモ書きを残したり…と、細かく使うので気づいたら無くなってしまうんです」
炭酸水・タブレット
「集中するとのどが乾くため、もう何年も前から炭酸水は常に口にしていて、1日2~3本は平気で飲んでしまいます。フリスクは仕事の気分転換や眠気覚ましに欠かせません」
(取材&文・SUMAU編集部 撮影・三浦 大)
INFORMATION
岡本さんが所属するLegalForceでは、「テクノロジーの活用で企業法務の効率化」を目指し、契約書レビュー支援サービス「LegalForce」のベータ版をリリース。ドキュメントの共有やステータスの管理、関連するコミュニケーションをクラウドに一元化。各条文ごとにチャット機能を備えているのが最大の特徴だ。