東京ひとりごはん
日本酒が恋しい秋の夜は
お燗上手な女性店主の店へ
仕事が早く終わった日、急に予定が空いた夜はひとりで気ままに過ごすにはいいタイミング。カウンターがあるレストラン、ワインや日本酒の注目店など、今やひとりで行っても十分に楽しいお店は増える一方です。ここでは“ひとりでも妥協なし、きちんと美味しいもの”をテーマに、ひとりごはん&お酒の良質な空間を紹介します。
シンプルな料理に生える
目利きが選んだ加賀野菜
ふつうだけどちゃんとしている。大人になると、そういう何げないことがとても大切に思えてくる。
『小料理kokoro』の料理には、そんな“ふつうだけどちゃんとしている”感がビシバシ漂っている。
カウンターになびく半紙には、「枝豆のゆでたて」、「自家製黒ごま豆腐」、「加賀太きゅうりのぬか漬け」などなど、誰もが食べたくなる日常の味を丁寧にすくい取る気持ちが見える。
看板料理は、石川の郷土料理としても有名な治部煮。柔らかい味付けで煮込んだ鶏肉と車麩は、日本酒にもワインにも合う。加賀野菜の天ぷらや酢の物、東京では馴染みの薄い赤ずいきも献立に並ぶ。そして、何よりおひとりさまにうれしいのは、メニューのほとんどがハーフポーションで注文できること。ちょっとずつあれこれ食べたいという食いしん坊心をちゃんと分かっているのだ。
店主の越野舞さんは石川県出身。近江市場の野菜の仲卸しをしている父に連れられて、子供の頃から得意先の料亭に出入りし、美味しいもので舌を磨いてきた。ズッキーニのように太い加賀太きゅうり、もちもちの食感が特徴の加賀れんこんなど、滋味深い加賀野菜も慣れ親しんだものばかり。
「まだまだあまり知られていない加賀野菜を
地元出身として、応援していきたいと思っています。
うちのお店で初めて食べたというお客さまに、
喜んでもらえたらうれしいですね」
店で出す加賀野菜は、野菜のプロである父が吟味して送ってくれるという。鮮度はもちろん、手に取るとずっしりと身が詰まっていて、食べれば柔らかい。本当に質のいい加賀野菜をリーズナブルな価格で扱えるのは、父の愛情とバックアップがあってこそだ。
ユニフォームは着物に割烹着。
店を持ちたいと思った時から、居酒屋ではなく『小料理』というスタイルを考えていたという。
「プロの料理人ではないので、料理が主役というよりは
扱っているお酒に合う料理を考えて出しています」
そもそも、舞さんが日本酒に魅せられたのは、お燗した日本酒の香りが開く瞬間に出会ったことだという。「何が違うのだろう」。そこから温度でクルクルと表情を変える日本酒の研究が始まった。
日本酒とナチュールワインの人気店『ル ジャングレ』ではお燗番としても活躍したこともあり、今は日本酒とナチュールワインの両方を出しているが、とくに日本酒はお燗へのこだわりが強い。
小柄でふんわりした雰囲気の舞さんは、女将さんと呼ぶには少しばかり可愛すぎる。けれど、そこが女性一人や20代の若い子が気後れせずに店に溶けこめる理由でもある。小料理というちょっと大人の世界で、20代、30代がゆっくりお酒をたしなむ姿は実に楽しそうだ。
季節の味覚が次々と登場する秋は和食が恋しい季節。そんな時に、ふらりとひとりでもご飯を食べに行けるちょっと素敵な店が新宿にできました。
小料理 kokoro
こりょうり こころ
住所:東京都新宿区西新宿7-9-15 新宿ダイカンプラザビズネス清田ビル1F
電話:03-6279-2407
営業時間:11:30~14:00、18:00~24:00 金曜18:00~24:00 土曜17:00〜24:00